第2話 四天王

 

 俺達が夕日に向かって走ろうとしていたら、魔王の間の扉が開き4人の人影が入って来た。


 「魔王様!ご無事ですか!?このレイモンド心配致しましたぞ!」


 執事服に羊の角が生えた爺さんが叫ぶ。


 「いやー無事に勇者ちゃんを仲間にできたみたいやな!流石は魔王様やで!」


 道化師の服装をした奴がおちゃらけて喋る。

 こいつさっき3回転くらいしながら血吐き出してたのにな…。


 「………………」


 エビの頭をした奴は頷くだけで無言を貫いてる。

 いやお前はさっき「…‥無念」とか言ってたじゃん。


 「魔王様ー!リリスは頑張ったですよ?褒めてほしいですー!」


 悪魔の尻尾と翼が生えたピンク髪の少女が得意気に喋ってる。

 

 確かに頑張ってたな、剣が当たる前に血糊出てたもんな。


 「‥‥貴様らよく私の前に顔を出せたの。安心するの一瞬であの世に送ってあげるの……」


 魔王が膨大な魔力を掌に集める。


 「お、お待ちくだされ魔王様!このレイモンド、持病の腰痛が出ただけでありまして、決して死んだ振りなどはしておりません!」


 「そうやで!ワイもあれや!敵を騙すのにはまず味方から言うやろ!?それやねん!」


 「……………」


 エビ、お前は高速で頭振ってないで喋れ。


 「そうですよー魔王様!リリスはあれです!その…あの……はっ!夕日が綺麗ですー!」


 現実から逃げるな。


 「まぁ魔王待ってやれよ。せっかく戦争は終わったんだ、これ以上犠牲はいらないさ」


 「勇者が言うなら待ってあげるの。でもお前達……次はないの、妾の涙を返して欲しいの。妾もすぐ逝くからねって思ったのが馬鹿みたいなの」


 「魔王様……申し訳ございませんでした!このレイモンド必ずやこの失態を挽回してみせます!」


 「ワ、ワイもや!すまんかった魔王様!この通りやで!」


 「…………」


 いや喋れ。


 「リリスもごめんなさいなのですー!そこの勇者が怖くてー!うわーん!」


 ……なんかごめん。


 「…もういいの。さっき勇者が言った通り戦争は終わったの!みんなには魔大陸の復興に尽力してもらうの!」


 「その事ですが魔王様、すぐに魔大陸全土に戦争終結の放送を流した方が良いかと存じます。」


 「それはまだ早いの。先に人類側に伝えてもらわないと武装解除できないの。こっちだけ引いて攻められたら困るのよ?」


 確かにな…だが俺が言っても半信半疑のやつも出てくるよな…。


 「魔王、正式に終結させるにはやはり国と国で決めた方が早いと思うんだが、どうする?」


 「なら人類側の最大の国ガルランド王国と条約を結ぶの。勇者はその事を伝えて欲しいの」


 「ガルランド王国なら話が早い、なんたって俺を召喚した国だからな。すぐに伝えて戻ってくるよ」


 あっ、転移陣だけは置かせてもらおうかな。


 「待てや勇者はん!あんたの実力はワイ等がよーく知ってはるが、最後の所で確信が持てん!こっちは中途半端な実力じゃぁ人間共に丸め込まれるんちゃうかって不安やねん!」


 いや、お前等が俺の何を知ってるんだよ…。


 「そ、そうですー!帰って人間を一杯連れて来て魔大陸を滅ぼす気ですー!」


 いやしないから、てかその気なら一人でするから。


 「ふむ、なるほど権力なんかに負けない実力を示せと…クラウニー、貴方はそうおしゃっる訳ですな?」


 「せや!人間の王様に逆らえるっちゅう実力を見せてもらわな夜も安心して寝られへんで!


 「……………」


 エビ喋れ。頭上下に高速で振るな。


 「勇者、私の配下がごめんなさいなの。でも私も安心したいの、あの枯山に魔法を放ってみて欲しいの。お願いするの」


 はぁ、俺は自然を愛する男なんだがな…まぁ今は魔王の部下だし言う事を聞いてやるか。


 「分かったよ、少し離れてくれ」


 俺は両手に魔力を軽く込める。


 『覇王滅殺勇者次元弾消えろ!』


 両手から放たれる魔力の塊が、瘴気に包まれおよそ生物が住めそうにない枯山を吹き飛ばす。


 「まぁ、こんなもんだ。もう少し強くやろうか?」


 「いやいやいや!もう充分や!充分やさかい!舐めた口きいてえろうすんまへんでした!」

 

 「……………凄い」

 

 喋った!エビ喋った!

 


 「リ、リリスはー始めから分かってましたよー、勇者が凄いって事はー!」


 嘘つけ。「滅ぼす気ですー」とか言ってただろ。


 「いやー!流石ですなぁ!このレイモンド感服致しましたぞ!」


 「勇者がここまで強いとは思わなかったの…。あのまま戦ってたらボコボコにやられてたの」


 そう、戦う気が起こらなくなる程の強さ……俺が求めたものだ。

 俺は戦わなくて済むように強くなったんだからな。


 「どうやらお眼鏡に適ったみたいだな。それじゃぁ行ってくるよ。魔王も終戦の準備をしといてくれ、条約の内容とかな。日程が決まり次第、伝えに戻ってくる。っあ!?転移魔法陣だけ設置させてくれ、これがあれば一瞬で行き来できるからな」


 「分かったの。勇者は私の部下なんだから、ちゃんと戻ってくるのよ?絶対なのよ?」


 「ああ、分かったよ。それじゃあな魔王……」


 俺はガルランド王国の首都バースデイに向けて転移した。


 

 

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