世界の半分をくれるって言うから貰ってみた

一日一話

第1話 世界の半分をくれてやろう

 私の名は勇者ファルケンハイン。

 

 百年続く魔族との闘いに終止符を打つため、一人魔王のいる城までたどり着いた。


 

 

 「よく来た、勇者よ!最後の戦いの前に聞いておかねばならぬ事がある。まぁ格式美というやつだ。……妾の部下になれ!さすれば世界の半分をくれてやろう!」


 「わかった!!その提案受けよう!」


 「そうか…やはり我々は闘うさだめ……え?

今なんて言ったの?受ける…?え?」


 自分で言って、何を戸惑ってるんだこの魔王は。


 「さぁ!早速何処から半分か正確に決めようじゃないか魔王よ!」


 「え?本当にいいの?嘘じゃないの?妾信じちゃうよ?……っは!?まさか信じて妾が心を許した所を後ろからブスっとする気じゃ……」


 「しないしない、いい加減疲れたのよ俺も。だから戦争は今日で終わりって事で」


 「………えーん!よ、よかったよー!絶対に妾、今日殺されちゃうって思って……。えーん!!四天王もバッサバッサ殺されちゃったしー!怖かったよー!!」


 「いやいや、誰も殺してないって。みんなちゃんと生きてるから。四天王ってみんな演技派なんだな、死んだふりがあまりにも上手すぎたから見逃しちゃったよ」


 「……え?妾も配下のダークアイで見てたけどあれ死んだ振りなの?妾だまされたの?」


 「ああ、みんな表面をサラッと切っただけで大量の血糊が飛んでな、口からも血糊を噴き出すし俺が一番ビックリしたよ。ハハハハ」


 「………妾許せない。…本当にぶっ殺してくるの」


 魔王から膨大な魔力が立ち昇り、部屋がガタガタ揺れている。


 「まあ、落ち着けよ。それより世界の半分って具体的に何処をくれるんだ?俺としては人類が暮らしてる中央大陸と東大陸は是非とも欲しいんだがな」


 「……そうだったの、あいつらを処すのは後にするの。妾も魔族が暮らしてる魔大陸と南と北の大陸はあげられないの」


 「ああ、それは分かってるよ。問題は西の大陸だな…あそこはエルフやドワーフの国があるんだったな。どうする?」


 「…さっきも言った通り世界の半分をあげる代わりに妾の部下になるの。だから勇者には西の大陸の管理もお願いするの。妾達魔族も戦後の復興で手が回らなくなるの」


 「…ああ、それでこの戦争が終わるなら安いものだ。だがまたなんで戦争なんか始めたんだ?」


 「……もう百年も昔の事なんて忘れてしまったの。それに妾じゃなくて父様が始めたのよ?妾じゃないの」


 そうかこいつも戦争の犠牲者か……。

 ならしょうがないな。


 「そうか……。俺も最近この世界に来たばかりだからな。この世界の事情はちょっとしか知らない、とりあえず戦争を終わらせると言う仕事は果たせたみたいだ」


 「やっぱり勇者は異世界からの召喚者だったの……。通りで強いはずなの。ここ数ヶ月で戦況が目まぐるしく変わったから何事かと思ったの」


 「魔王の配下には悪い事をしたな。極力犠牲は出さないように配慮したつもりだったが……」


 「……ううん、いいの。戦争に犠牲は付き物なの。それに魔族も沢山人を殺したの。これからは人類も魔族も仲良く出来るように頑張るの!」


 「ああ、魔王。俺とお前なら出来るさ!さぁ、あの夕日に向かって走ろう!」


 「はいなの!」



 こうして人類と魔族の戦争は終わった。

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