第6章124話:ルミの不調

「せいッ!!!」


振るわれる一剣。


剣士ならば、感嘆のため息をついてしまうような美しい剣である。


全く無駄がない。


効率的な重心移動と、技のつなぎの滑らかさ。


流麗の一言に尽きる。


当然、攻撃力は桁違いに上がる。


「くっ!」


ルミは、チサトンの剣を、軽々と受け止めることができなくなってきていた。


(ダメだ……)


と、彼女は思う。


(ここで叩き潰さなきゃ、ダメだ。これ以上、調子に乗せては、取り返しがつかなくなる気がします)


ルミとチサトンのあいだには、絶対的な実力差があった。


しかし――――チサトンの驚異的な追い上げ。


こんな短時間で、ここまで差を詰められるとは思わなかった。


これが年間ランカーの底力?


あるいは意地?


いずれにせよ、あなどれない。


さっさと決着をつけてしまわないと、敗北もありえる。


そう思い、ルミはギアを上げようとするが。


「……っ」


思ったように剣が振れない。


いまいちキレのある攻撃ができない。


「ハァッ!!」


チサトンが裂帛れっぱくの気合で打ち込んでくる。


無我の境地の流麗な剣が、ルミに激しく叩きつけられる。


「うぐっ!」


重い。


いや、それだけじゃない。


今のは、自分の受けも悪かった。


ジャストポイントで受けられなかったから、自分の腕や手首に余計な負荷が伝わってしまっている。


「……」


さっきまで出来ていたことが、出来なくなってきている。


ルミは、自分の調子が狂い始めていることを自覚していた。





――――――――――――

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