第6章122話:チサトンの猛攻

「ハアアァッ!!」


チサトンの下段の斬撃。


フェイントを2回も入れた攻撃だが、ルミは冷静に受け止め――――


回転斬りを返してくる。


回転しながらの攻撃にも、背筋の爆発エネルギーを乗せてくる。


それをチサトンは、恐るべき集中力で回避する。


「せいッ!!!」


次のチサトンの一撃は上段から。


これもルミに受け止められる。


「はぁ……はぁ……はぁ……、……! ラァアアアアアアアッ!!」


息が荒れても。


汗がにじんでも、攻撃を続ける。


なりふり構わず、気炎をあげて斬りかかるチサトン。


――――その姿は、下位の選手を、上位で待ち受ける年間ランカーではない。


むしろ格下が、格上へと下克上をするかのような、挑戦者のソレだ。


でも、チサトンは恥ずかしいとは思わない。


これでいい。


格好良くなくたって、ただ勝利の一点だけを見据えて戦う。







神埼『チサトン選手の猛攻! しかし、ルミ選手はソレを完全に受け止めている!!なんという地力の高さか、仮面の剣士・ルミ!!』


新田『あいつ……だんだん良い顔になってきたな』


神埼『え?』


新田は、チサトンの表情に注目していた。


さっきまで圧倒されて、失意の底にいるような顔つきをしていたチサトンだったが。


現在は、曇りが晴れたような……


自分の在り方を思い出したかのような……そんな顔をしている。


もちろん必死の形相だ。


余裕なんて無さそうに見える。


しかし。


そこに危なさを感じないのだ。


チサトンの雰囲気が変わったのは明らかだ。


新田(もしかすると、逆転もあるかもしれない……か?)


ルミの圧勝で終わりそうな空気もあったが、わからなくなってきたと、新田は思った。


勝負とは、強い者が勝つんじゃない。


最後まで立っていた者が勝つ。


強さにおいてはルミのほうがチサトンより上だが、だからといって必ずルミが勝利するわけではないのだ。

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