第6章105話:瞬間移動


しかし、彼女は次の瞬間、ニッと笑みを浮かべた。


「そやけど、見切ったわ!」


「!!?」


ルミが回転しながら斬りかかったとき、チサトンが急に間合いを詰めて刀を振りかざしてきた。


チサトンの間合いの詰め方は、実に絶妙なものであり……


ルミは攻勢だったはずの状態から、一転して守勢に回される。


チサトンの攻撃を、ルミは受けた。


(お、重い!?)


チサトンの攻撃は、さっきとは段違いである。


どうやら、さきほどはルミと同様、本気ではなかったようだ。


とてつもなく重い斬撃を、剣の腹で受けたことで、ルミは10メートルは後退させられる。


腕がビリビリとしびれた。


「ルミさん? ウチはさっき、本気でやれ言うたよな? ソレ、あんたの本気ちゃうやろ?」


「!!」


「瞬間移動、使えや」


チサトンは不敵に笑って、言う。


「瞬間移動ナシでウチには勝てん。悪いけど今のあんたじゃ、ウチの相手にならんで?」


「……」


確かに、剣舞はあっさり見切られた。


このまま同じ攻撃を続ける意味はない。


このレベルの相手に、見切られた攻撃は二度と通用しないからだ。


チサトンは想定以上の実力であり、スキルなしのルミでは荷が重い。




……と、ルミは思っていたが、実はルミは、いつもの調子で戦えていない。


いつもの70%ぐらいの実力である。


だからチサトンに押され気味なのだ。


別にルミがわざと手を抜いているのではなく……無意識。


本人は本気で戦っているつもりなのだが、相手が魔物ではなく、チサトンという"人間"であるため、無意識に力にセーブがかかっていた。


バイタルガードがあるので命を奪うことはないのだが、それでも人間相手に本気で剣を向けるということに、ルミの自制心が働いてしまっているのだ。





ともあれ、現在のルミの力では、チサトンと互角に戦うことができないのは事実。


ゆえに……使うしかない。


「わかりました。では、遠慮なくいかせていただきます」


ルミは、瞬間移動スキルを発動する。


「!!」


ルミはチサトンの背後に瞬間移動。


そのまま回転斬りを放った。


「くっ!?」


チサトンが慌てて刀を振るって合わせる。


……防がれた!?


しかし、はじめてチサトンの表情から余裕が消えた。


さすがに瞬間移動の対処は難しいのだと理解する。


「はっ!!」


ルミはステージを上を滑りながらチサトンに高速接近する。


そして回転斬り――――


と見せかけて、瞬間移動。


チサトンの側面に現れて、剣を放った。


「ぐあっ!?」


ついにチサトンに攻撃が入る。


だがここで止まらない。


ルミはさらに瞬間移動でチサトンの背後へ移動する。


その背中に剣を放つ。


「くっ!!」


チサトンがなんとか気配を察して避けた。


背中をかすめたものの、ヒットにはならない。


チサトンが笑う。


「ふう……さすがに瞬間移動は手強いな」





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