第6章104話:分析と剣舞


ルミは、今の攻防を、冷静に分析する。


まずルミの攻撃は、そこそこ良い感じのクリーンヒットだった。


小手調べの意味もあったので、全力の7割ぐらいのパワーだったとはいえ、ドラゴンウルフぐらいなら一撃で蹴散らせられる強度はあった。


だが、難なく、相手に耐えられてしまった。


チサトンには相当の打たれ強さがあることは間違いない。


そして、逆に、チサトンからの攻撃について。


思ったよりも威力があった。


あれが全力かどうかはわからないが、当たり所が悪ければ結構なダメージが入っていたように思える攻撃だ。


それに、ルミの防御をかいくぐるほどの剣術。


フェイントが相当上手い。


技術力だけならルミを上回るかもしれない。


(チサトンさんは強い。あまり手加減をしていられる相手ではなさそうですね)


油断すると負ける。


チサトンはそう思える強者だ。


ルミは、全力で戦うことに決めた。


闘気を高める。


その空気を感じ取ったか、チサトンが不敵な笑みを浮かべた。


「おお、やる気になったか。そや、本気で来い。小手調べなんてぬるいことやってたら、全力出す前に終わってまうで」


「……はい。どうやら、そのようですね」


ルミは足元に力を込める。


「ここからは全力でいかせていただきます」


次の瞬間。


ルミは正面に―――ではなく、斜め横に跳んだ。


「!!」


チサトンが身構える。


ルミは一歩目の着地とともに、軸足をベースに、くるりと回転しながら、チサトンに接近する。


そして回転斬り。


「っと!」


ガキィィンッ!!


と、剣と日本刀がぶつかりあった。


ルミはさらにチサトンの側面へと回りこむように移動する。


同時に、身体を独楽こまのごとく、高速回転させる。


「……!」


これもチサトンは剣で受ける。


しかし、衝撃を殺しきれずに、たたらを踏んだ。


ルミは今度は、前宙をしながら縦に高速回転しながら剣を振るい、斬りかかった。


観客たちが困惑する。




「おい、相手選手のあの動きはなんだ?」


「すげーなオイ」


「回転しながら斬りかかるスタイル?」


「舞みてえ」




ルミの剣舞に、驚く者たちが多かったようだ。


ステージの上をフィギュアスケートのごとく滑らかに動き。


パルクールのごとく、アクロバットなジャンプと回転を交えながら攻撃を仕掛ける。


こんな滅茶苦茶な攻撃でありながら、フェイントも欠かさず、威力も落とさない。


まさにブレイドアーツ。


見る者を魅了する圧倒的な剣撃だ。




神埼『ここでルミ選手! まるで舞うような斬撃を繰り出します。非常に美しい攻撃ですね』


新田『そうだな……しかも、ただ魅せるだけの攻撃ではなく、よく計算されている。チサトンからすれば厄介な攻撃だ。受けに回らざるを得ないだろう』




新田の発言通り、チサトンは反撃の糸口を見出せない。


ルミの剣舞は、トリッキーなうえに、威力も高いからだ。


「……なるほど。奇天烈な攻撃すぎて、対応が難しいわ。なかなかメンドクサイ攻撃やんけ」


チサトンが感想を述べる。

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