第6章103話:決勝戦、開始


「では―――――はじめッ!!」


ズパァンッ……!!


開幕を告げるピストルが鳴り響いた。


その号砲とともに。


ルミが疾駆する。


「ふっ!!」


最初の一撃!


フェイントを4回入れた攻撃をチサトンに向けて放った。


その剣撃がチサトンの肩にクリーンヒットする。


チサトンが吹っ飛んだ。


倒れる。


会場が静まり返った。


……。


……。


神埼『おおっと!! 開始早々、ルミ選手の強烈な一撃が炸裂! しかも、これはまさかの一撃―――――』


「んー、なるほどなぁ……!」



その声とともに、チサトンが跳ね起きる。


打たれた肩をぐりぐりと回して、腕の具合をチェックしはじめる。


「ええ攻撃やったけど、耐えられんくはないな。うん、余裕余裕」


チサトンがそう告げた次の瞬間。


観客席から大歓声が巻き起こった。




「耐えたああああああああああああ!」


「うおおおおおおおおおおおおおお!!」


「さすがチサトンだあああああ!!」


「チサトン、チサトン、チサトン、チサトン!!」


「チサトンすげー!」


「やっぱお前が最強だあああああああああああああ!!」


「ピンピンしてんな!」


「それでこそチサトンだ!!!」


「ひゃああああああああああああああ!!」


「チサトン様あああああああ!!!」




ここまでルミは、全ての試合を一撃で終わらせてきた。


4連覇していた篠山メイですら、その攻撃に耐えられず、あえなく撃沈した。


しかし。


やはり、チサトンは年間ランカー。


一撃では沈まない。


それどころか、ほとんどダメージが入っていないようにすら思う。


さっきの攻撃程度では、有効な痛打とは成り得ないのだろう。


「それじゃ、次はこっちからいくで!」


チサトンがステージの床を蹴って、迫ってくる。


刀を上に構えた上段。


振り下ろされる日本刀。


ルミは、剣で受け止めようとする。


「……!?」


チサトンの刀の軌道が変わる。


ルミの剣を避けてかいくぐろうとしてきた。


しかし、ルミもその程度の変化は想定済みだ。


ルミはチサトンの剣の変化に合わせようとした。


だが――――


さらにチサトンの剣はうねるように複雑な軌道を描き……


ルミの防御を最後までかいくぐって、胴体に攻撃をぶちあててきた。


「ぐっ……!!」


チサトンの攻撃の威力は高い。


ルミは、攻撃を食らった衝撃で10メートルほど吹っ飛ばされる。




「「「おおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」




歓声がわっと広がる。




だが。


ルミはもんどり打ちながらも、体勢を立て直して、受身を取った。


なんとか片膝をついた状態で、転ばず踏みとどまる。


ゆっくりとルミは起き上がった。




神埼『おーっと!! ルミ選手もまた、チサトン選手の一撃に耐えることができたようです! 打たれ強さもピカイチです!』




実況がそう解説する。


だが。


会場は、しーんとしている。


チサトンがルミの攻撃を耐えたときは、大歓声が広がったのに。


今度は、いまいち、盛り上がらなかった。


それどころか、「あ~」「惜しい」「一撃ならずか」と残念がる声が多い。


そんな会場の空気を察して、実況の新田は思った。




新田(会場の大多数が、チサトンの応援か。ルミにとってはアウェイな状況だな)




―――――――――――

おしらせ:


以下は、作者の別作品です。

大変好評頂いている女主人公の作品なので、よろしければ、こちらもあわせてお読みください!

【追放令嬢、クラフトしながらキャンピングカーで異世界を旅します】

https://kakuyomu.jp/works/16817330658105992517

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