第6章102話:二人のあいさつ


神埼『それでは最後に、チサトン選手・ルミ選手、それぞれからコメントをいただきたいと思います!』




実況がそう述べた。


すると、スタッフらしき者が一人、ルミたちに近づいてきた。


マイクを渡してくる。




神埼『まずはチサトン選手から、お願いします!』




会場の大スクリーンに、チサトンの顔が映し出される。


チサトンは微笑んで、堂々たる様子で言った。


「ウチは篠山メイの4連覇に阻止しにきたと、開会の挨拶で述べさせてもらった。でもそれは、ルミさんにやられてしもうた」


チサトンは苦笑する。


それから言った。


「ルミさんは強い。簡単には勝たせてくれんやろな。でもな、ウチには応援してくれる人がたくさんおるんや。だから、ウチは負けへんで。きっちり優勝して、みんなを笑顔にするんや」


会場から歓声が上がった。


観客席には、現在、チサトンの応援がめちゃくちゃ多い。


いや、もう、観客の半分以上が、チサトンの応援団といってもいい。


チャンネル登録数1500万。


多くのファンに支えられ、ここに立っているのがチサトンである。


「みんな見ててな? 応援よろしくな!」


拍手が起こる。


ここでチサトンの挨拶は終わりだ。


次はルミの番である。


ルミの仮面姿がスクリーンに映し出される。


ルミは言った。


「すみません……こういう挨拶とか、苦手で……話すこととか、思いついてないです」


笑いが起こった。


ルミは続ける。


「でも、精一杯頑張りたいと思います。ここまできたら、優勝して帰ります」


ぱらぱらと小さく拍手が起こった。


ルミはそこで挨拶を打ち切った。


スタッフたちがマイクを回収する。


代わりに、武器籠を持ってきた。


ルミが選ぶ武器は、もちろん剣。


そしてチサトンが選ぶ武器は、日本刀である。





神埼『ルミ選手、チサトン選手、ご挨拶ありがとうございました!』


神埼『それでは、二人も武器を持ったところで、いよいよ決勝戦――――開始とさせていただきます!』




盛大な拍手が起こる。


拍手が収まると、静寂が会場を包み込む。


審判が言った。


「双方、準備はいいか?」


チサトンがうなずく。


ルミもうなずく。


二人が、剣を構えて、向かい合う。


審判がピストルを掲げた。

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