第4章68話:推しと友達



そして、口をあわあわさせながら言った。


「ちょっ……えええ!? ルミちゃんが、るるるるるルミさん!? ほ、ほんとに!?」


「本当です。私がルミちゃんねるのルミです」


「うそおお!? そんなことってある!? だって、ルミちゃんはルミちゃんなのに!」


驚愕の色はあらわにしたままだ。


ルミは仮面を外した。


「この通り、本物です」


「ほ、本物……ルミちゃんが……ルミさん」


「はい。えっと……黙っていてすみませんでした」


「う、ううん。いいよ。そりゃ言えないよね。まさかあの有名人のルミさんが、ルミちゃんだったなんて」


「はい……それで、その」


ルミは財布を取り出し、5000円をテーブルに置いた。


コトリのほうに差し出す。


「投げ銭のお金、返します。私は、コトリさんとは対等な友人でいたいですから」


コトリは一瞬、目を見開く。


しかし、微笑んでから言った。


「ルミちゃん、それは貰っておいてよ」


「いや、でも」


「私が投げたいと思ったお金だから。もうルミちゃんのものだよ。ファンの気持ちは、受け取ってほしいかな」


「う……」


そういう言い方をされると、無理に返せなくなる。


「でも、そっか……お金を返すために、正体を打ち明けてくれたんだね?」


「えっと……はい」


ルミが肯定する。


コトリは納得した。


そして言った。


「あーでも! そっかぁ、ルミちゃんがルミさんかぁ。うあああどうしよ、これからどんな顔して会えばいいんだろ」


「……普通の友達でいていただければ嬉しいんですが」


「今日はもっと良い服を着てくれば良かったぁ! せっかくルミさんの部屋にお呼ばれしてるのに!」


人の話を聞いてください!?


それからコトリは、しばしそわそわしていたが、やがていつも通りに戻ってくれた。



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