第3章60話:特定班


その男の周りには、男女4名ほどが立っていた。


彼らは口々に言う。


「我らは特定班だ!」


「ルミの素性を特定するため、彼女からあらゆるデータを取らせてもらう!」


「どきなさい。特定の邪魔よ!」


しかし、ここにいる者たちの多くは、ルミの出待ちをしていた者である。


特定班の好きにさせるわけがない。


「何が特定だよ! お前らのほうが邪魔だろ!!」


「迷惑なんだよゴミども! 消えろ!」


「特定なんて犯罪なのよ!」


「そうですわ。とっとと失せないと、範囲魔法で吹き飛ばしますわよ!」


ルミファンたちが口々に言い返し、特定班といがみあいを始めた。


売り言葉に買い言葉。


場が混沌としてきた……。


ルミと来花は、どうしたものかと立ち尽くす。


――――そのとき。


突如、周囲に複数の光が出現した。


その光は、少しずつ像をなし、やがて人の姿となる。


彼らは、此間ダンジョンを攻略していた探索者である。


此間ダンジョンの下層ボスが倒されたことで、ダンジョンが消滅し……


ダンジョン内にいた探索者たちが、外へと弾き出されたのだ。


いきなりダンジョンから排出された探索者たちは、何が起こったのかわからず、困惑していた。


「うわ……なんだなんだ?」


「いきなり外に飛ばされたぞ」


「まさかボスが倒されたの?」


「いや、まじで? ここの下層って難易度ヤバイだろ? 誰が倒したんだよ」


「ルミだよルミ! 竜人王ぶっ倒したんだって! ほら!」


探索者の一人がルミに指をさしてくる。


こちらを一斉に見始めた探索者たちは、驚愕の目をした。


「え……まじ? ガチルミじゃん?」


「ええええええ!? 本物!?」


「うわ、うわーーーー! あたしファンなんだけど!?」


ぞろぞろとこちらにやってくる。


あー。


もう、なんか、めちゃくちゃだ。


てんわやんわとなり、ルミはどうすればいいかわからず、固まってしまう。


「ルミさん」


そのとき来花が、耳元でささやいてきた。


「瞬間移動で逃げましょ」


「……!」


そうか。


その手があったか!


ルミはうなずく。


来花の手を取り、スキルを発動した。


(瞬間移動!)


移動した先は、此間町の街路である。


ダンジョンから2分ほどの距離にある場所だ。




――――――――――――

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