第3章59話:ダンジョンを出る


そのとき来花は言った。


「帰る前に、配信は切っておきましょうか。たぶん出待ちがいると思うから」


「出待ち……」


「……言い忘れていたけど、あたし、どこのダンジョンを攻略中なのか、チャンネルページに書いているのよ。だからルミさんが此間ダンジョンにいることは、ユーザーには知られていると思うわ」


な、なるほど……


それで出待ちがいると。


有り得そうな話だった。


ルミは配信を切ることに同意し、携帯から、配信終了ボタンを押した。


来花も配信を終わらせる。


配信器材を全てアイテムバッグへと収納した。


「じゃあ、帰りましょう」


「はい」


二人は、魔法陣に乗った。


魔法陣が輝きはじめ、視界が移り変わっていく。


数秒後、二人はダンジョン1Fの入り口横へと転移していた。


そのままダンジョンを退場する。


来花が予想していた通り、ダンジョンを出てすぐ、たくさんの出待ちユーザーに取り囲まれた。


「ルミさあああああああん!」


「握手してください!!」


「きゃああああああああああああああ!!」


至近距離に迫られて、あたふたするルミ。


来花が苦笑している。


そのとき、


「ルミ様! わたくしと握手を! あと、サインもいただきたいですわー!!」


「……!?」


ハイテンションなお嬢様言葉で話しかけてきた女性。


あれ? 見覚えあるよ、この人。


確か、同じ大学の……リリミアさん、だったか。


「リ、リリミア……?」


来花さんが驚いたように、リリミアさんを見つめた。


リリミアさんも来花さんを見つめ返す。


「来花……あなたの配信、見ていましたわよ」


「あ、うん。そう……なんだ?」


「ルミ様とたーっぷりイチャイチャしてくれやがりまして! まったくうらやましくて、殺したいですわ」


「殺すのはやめてね!? てゆーかあんた、ルミさんのファンだったの……?」


「そうですわよ! 何か問題がありまして?」


「い、いいえ……」


来花は明らかに困惑していた。


ただ、リリミアがガチファンであると悟ったことで、余計なことは言うまいと思った。


ファンや信者をうっかり刺激するようなことは、絶対にしてはならないのである。


と、そのとき。


「ルミだ! 特定せよ!」


眼鏡の男が叫んだ。

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