第3章54話:熱戦
ルミの斬撃。
そこに竜人王の斧がぶつかる。
さらに斬撃。斬撃。斬撃。
激しい火花が散った。
剣と斧がぶつかるたびに、空気の圧が周囲に広がり、壁や床に損傷を負わせていく。
「ふンッ!!!」
そのとき、竜人王の気迫のこもった下段からの一撃が炸裂した。
ルミが剣で受ける。
しかし勢いを殺しきれず、ルミは宙にすくいあげられた。
空中に飛ばされたルミを、竜人王が跳躍によって追いかける。
だが空中戦はルミの領域だった。
竜人王がルミに斬りかかるも、ルミは【瞬間移動】を使って竜人王の剣をかわし、側面へとワープした。
「なんだと!?」
さすがに予想外だったのだろう、竜人王は目を見開いた。
まんまと側面を取ったルミは、竜人王に強烈な斬撃を叩き込む。
驚きに意表を衝かれる形となった竜人王は、身体をそらして回避を試みるも、肩口を大きく切り裂かれた。
血がほとばしる。
「くく、ははははは!! 我に傷をつけるか!? 面白い!!」
互いに床へ降り立つ。
ルミも竜人王も、着地してノータイムで踏み込み、得物をぶつけ合う。
細かく移動しながら、位置を変えながら、あるいは疾駆しながら。
致命の攻撃を放ち続ける。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
『いけええええええええええええええ!!』
『達人同士の殺し合いwwwww』
『ルミいいいいいいいいいいいいいいいい!!』
『ルミ強すぎるわ……』
『敵もやべえなコレ』
『魔王騎士レベル?』
『ルミの強さは変態的だな。どうやったらここまで強くなれる?』
『速すぎるwwwwwwww』
『高速再生して観ているようなスピード感だな』
『ちょっとルミが押してるか?』
「なんて戦いなの……」
隅のほうに避難し、観戦していた来花はひそかにつぶやく。
戦いの余波がここまで飛んでくるほどの激戦だ。
尋常ではないエネルギーのぶつかりあい。
形勢は、互角に見える。
しかし――――わずかにルミが押していた。
戦闘に瞬間移動を織り交ぜはじめたからだ。
瞬間移動を効果的に使うことによって、ルミは、形勢を優位に進めている。
わざと吹っ飛ばされたように見えて、即座に瞬間移動で同じ場所に戻り、カウンターを繰り出す。
高速で瞬間移動をして残像を作り、攻撃の位置を定ませない。
フェイントや撹乱、攻撃にフェイクを作ることによってルミは、竜人王を翻弄しはじめていた。
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