第3章53話:竜人王
<リリミア視点>
リリミアは此間ダンジョンの入り口に立つ。
実は、ルミに会いにきたリリミアは、さきほど此間ダンジョンに突入し、途中の階層までを踏破していた。
しかし、もう少しでルミたちに追いつけるというところで、ルミと来花が下層に転送されてしまった。
さすがに下層への突入は無理だと判断したリリミアは、諦めて、二人が出てくるのをダンジョン入口で待つことにしたのだ。
つまり、出待ちである。
(くぅ~!! わたくしも近くでルミ様の勇姿を拝見したかったですわぁ!!)
ルミのボス戦を、ルミちゃんねるのページから眺めていたリリミアは、盛大に悔しがった。
と、そのときだ。
「生ルミまだかなぁ」
「会ったらサインもらお?」
という声たちが、横から聞こえてきた。
実は、リリミアのほかにも十数名、ダンジョン入り口で待機する者がいた。
ほとんどがリリミアと同じく、ルミを出待ちしているファンである。
ただ、一部。
「今日こそは必ず、ルミの素性を特定してやる……!」
などという、不埒な考えを持つ者もいるようだが……。
(ふん……もしルミ様に迷惑をかけるようなクズがいたら、このわたくしが範囲魔法で吹っ飛ばしてやりますわ!)
リリミアはリリミアで、なかなか過激なファンであった。
<ルミ視点>
ルミは悠々と着地した。
竜人王の祭壇を見上げる。
「なるほど。あなどっていたことを詫びよう。秀でた武芸、極まりし個人技。賞賛に値する」
「……ん。魔物に褒められるのは、反応に困りますね」
「魔物だろうと人間だろうと、優れたものには賛美を送る。当然のことではないか、仮面の剣士よ」
「……」
ルミは思う。
この竜人王は、意外と悪い魔物ではないな……と。
しかし、そう思ったとして、殺し合いを避けるという選択はない。
ルミは竜人王を撃滅するつもりだ。
竜人王もまた、ルミへの殺意を緩めない。
戦士だからこそ、相手に最大の敬意を持って、殺すのである。
「我が直々に相手をしてやる。先に言っておくが、我は竜人兵より何倍も強い。その卓抜の剣腕で、我を超えてみるがいい」
竜人王はそう告げたのち、腰を落として、巨大な戦斧を両手で構えた。
まるで深山のごとく、安定した構えだ。
ゆるぎない戦意と闘志を感じる。
ああ。
強いな。この相手は。
ルミはそう認識した。
ゆえに、自己へ強化バフをかけておく。
―――【剣武天限】。
これでルミの戦闘ステータスが一時的に向上する。
準備はできた。
「いきます」
ルミが地を蹴る。
祭壇の前まで走り、一歩で壇上まで登ると、空中で身体を縦に回転させながら斬りかかった。
上段の振り下ろす剣撃を、竜人王に浴びせかける。
竜人王がそれを斧の柄で受け止めた。
衝撃で竜人王の足元が陥没し、祭壇に激震と亀裂が走る。
いったん床に着地したルミは、即座に竜人王の側面に回りこんで、ふたたび斬撃。
竜人王はやはり斧の柄で受けるが、今度は勢いを殺しきれず、吹っ飛んだ。
祭壇近くの支柱に激突する。
竜人王が体勢を立て直す前に、ルミが追撃で斬りかかるが、竜人王はサッと横に避けてやり過ごした。
空振ったルミの剣が、支柱を切り裂く。
すぐさまルミは支柱から離れて竜人王に追いすがった。
「なんたる剣気……相手にとって不足なしッ!」
竜人王は笑みを浮かべて、ルミを迎え撃つ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます