第3章40話:素材の分配について
ややあって、ルミは来花に言った。
「あ、余ったぶんはあげますよ。こんなに持って帰れないですし」
ギガントゴーレムはデカイので、全身すべて回収することは無理だ。
重要そうな素材であるコア、魔石、胴体の一部を回収して終いとする。
あと、アイテムバッグが一杯なので、要らない素材はここで捨てていくことにした。
「いや、でも……あの……」
来花は躊躇した。
何もしていない自分が、素材を貰ってもいいのか?
そりゃ素材は欲しいが……あさましい行為ではないか?
そう思ったのだ。
「遠慮しないでいいですよ。来花さんが持って帰らないと、どうせ捨て置くだけですし」
「……」
「有用な素材は積極的に持ち帰って、市場に流したほうがいいと、探索者の本にも書いてありました。そこから生まれた武器や防具が、探索者の装備となって、ダンジョン攻略を効率化し、人々を救うことにつながるのだと」
ルミは探索者としては初心者なため、教本を使って、勉強中である。
その本には、貴重な素材を捨て置くことは自分が損するだけでなく、人類にとっても損失があると書かれていた。
納得のいく話だ。
素材を全無視してしまった、二週間前の自分に聞かせてやりたいね。
「なので、まあ、遠慮する必要はありません。貰っていってください」
「……わかったわ。じゃあお言葉に甘えます。ただ、出来る限り買取という形をとらせてもらうわ」
「お金を払うということですか?」
「ええ。それは当然だと思うの。タダで貰うのは、自分の信条的に許せないもの」
かくして、素材については来花が買い取る形となった。
人気グランチューバーとはいえ大学生の来花に、Aランク素材を大量買いするような大金はないので、格安での買い取りということで約束がついた。
「さて、ギガントゴーレムの回収も終わりましたし、先に進みますか」
下層がどんなダンジョンなのかはわからない。
しかし、ここで立ち止まっていてもラチがあかない。
脱出するためには進むしかないだろう。
来花はふと尋ねた。
「そういえば……今思い出したけど、ルミさんって瞬間移動できるのよね? なら、それを使って帰れないかしら?」
ああ……
忘れていた。
確かに瞬間移動ならば、中層へと転移しなおせるかもしれない。
「やってみましょうか。私につかまってください」
「あ、うん」
来花はルミのコートをつかんだ。
ルミは瞬間移動を発動する。
……。
……。
……何も起こらない。
「ダメみたいですね」
「瞬間移動じゃ、階層をワープすることはできないのかしら」
「試したことがないのでわからないですが、そうなのかもしれません」
「じゃあ結局、攻略するしかないってことね……」
瞬間移動では帰れない。
ならばダンジョンを探索し、上への階段を探すしかないだろう。
「あたしは、Aランクの魔物と1対1で戦うのは厳しいわ。だから―――――」
「ええ。大丈夫です。私が守りますよ」
「本当に、あなたがいてくれて助かったわ。サポートは全面的に任せてちょうだい」
「はい。よろしくお願いします」
ルミと来花は歩き始める。
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