第3章38話:魔法陣


ルミは壁の前に立つ。


拳を構えた。


と、そのとき。


ゴッ、と音がした。


「……!?」


さらにゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴと音がする。


ダンジョンが軋むように揺れる。


同時に、目の前の石壁が二つに割れて、開いていく。


ルミは何もしていない。


ひとりでに壁が開いたのだ。


困惑する。


やがて壁が口を開けた先に、石壁の部屋が存在していた。





『えwwwwwww』


『勝手に開いたwwwwww』


『何故wwwwwwww』


『殴る前に開く壁w』


『壁くんもビビったんだなwwwwww』


『壁パンチの殺気を感じたかw』


『壁「殴られるのはイヤです!」』


『壁パンチは痛そうだもんなwwwwww』


『俺が壁でもそうするわwwwww』




「宝箱があるわ!」


来花が石壁の奥を見つめながら叫ぶ。


彼女の言う通り、そこには一つの宝箱があった。


隠し部屋の宝箱。


レアアイテム確定だ!


「見たところ周囲に罠らしきものは無さそうね」


「そうですか。じゃあ入りましょうか」


「ええ」


ルミと来花はさっそく隠し部屋に入る。


宝箱に向かって歩いていく。


しかし。


部屋の中ほどまで来たときだった。


突如として、それは発動した。


「!!?」


足元が急に光りだす。


慌てて下を見たルミは、そこに巨大な魔法陣が描かれているのに気づいた。


さっきまでは無かった!


突然現れたのだ。


すでにルミと来花は魔法陣の真ん中にまで入ってしまっている。


「罠です!」


ルミが叫んで、来花を掴んで離脱しようとした。


しかし、もう遅い。


魔法陣は発動し、そこに描かれたスキルを顕現させた。


視界が移り変わっていく。


これは……


――――転移、だ。


魔法陣の外に出ようとするが、叶わない。


見えない防弾ガラスでもあるかのように、透明の壁に脱出を阻まれる。


ルミが拳を叩き付けようとしたが、その前に、転移は完了してしまった。


魔法陣の光が消え、周囲の景色は完全に切り替わっていた。


洞窟ではなく、迷宮である。


「ここは……」


縦60メートル、横50メートルほどの四角い部屋だ。


高さは10メートルほど。


壁は石壁ではなく、レンガ壁となっている。


出口が一つだけある。


ルミは視線をめぐらせながら、つぶやいた。


「どうやら迷宮のようですね」


「え、ええ。でも、どこの―――――」


来花は言いかけたが、何かを思い出したようにハッとした。


「もしかして、ここ……下層……?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る