第3章34話:配信開始
此間ダンジョンは、洞窟であった。
この洞窟ダンジョンは、上層・中層・下層に分かれている。
上層は初心者向け。
中層は中級者向け。
下層は上級者向け。
……と分かれている。
なお、上層は5階、中層は10階となっているらしいが、下層だけは何階まであるかは不明だそうだ。
下層は魔物が強く、難易度が高いので、誰も踏破したことがないのだとか。
ルミは今回、下層にいくつもりはない。
中層で、のんびりと探索配信をするつもりだった。
(さて、さっさと上層を突破してしまいましょう)
ルミは心の中でそうつぶやき、走り出した。
武装などはしていない。
なので、出会った魔物は、全て拳と蹴りで蹴散らしていく。
私服&徒手空拳だ。
走っている途中、探索者ともすれ違う。
彼らを素通りして、階段を見つけ、下の階層へと進んでいく。
それを繰り返し……
やがて6階に到着した。
ここからは中層だ。
同じ洞窟ではあるが、壁の色が少し緑っぽく変わっており、さっきまでとは違うフロアに来たことが察せられる。
魔物の気配も、上層よりも強めである。
一応、敵の強さがどれくらいか調べるため、ルミは6階を歩き回って、何匹か魔物を狩ってみた。
弱い。
上層と変わらない。
……とルミは感じているが、もちろんそれは彼女が強すぎるからであって、実際は中層の魔物は強い。
彼女にとっては、並みの探索者が苦戦する魔物も、弱小以下の雑魚にしか感じられないのである。
(もうちょっと奥にいってから、配信を開始しましょうか)
そう心に決めたルミは、上層のときと同じように、6階を走り始めた。
敵を蹴り殺しながら、走り続け、やがて階段を見つける。
即降り。
7階も同じように走り、さらに8階、9階、10階、11階へと進んでいく。
もはや此間ダンジョンに来てから、ただひたすら走り続けるマラソンである。
そうして12階へと辿り着いたとき、ルミは止まった。
さすがにここまで来ると、探索者の姿もない。
これだけ深く潜れば、気兼ねなく配信活動ができるだろう。
そう思い、ルミは配信の準備を始めることにした。
まずは適当に部屋を探して、服を着替える。
「コスチューム番号2!」
そう唱えるだけで、彼女は戦闘衣と仮面の姿へと変身した。
ルミの配信時のユニフォームである。
さらに、アイテムバッグから配信器材を取り出す。
携帯から配信サイトである【グランチューブ】にアクセス。
配信のための【飛行カメラ】を起動して、宙に飛行させる。
グランチューブと飛行カメラを無線で接続。
配信タイトルは『一人で語りながら、まったりダンジョンを攻略します!』としておいた。
これで準備は完了だ。
よーし。
始めよう。
「配信開始!」
携帯から配信開始のボタンを押す。
すると一気に同接が爆発的に伸び始めた。
次々とコメントが書き込まれはじめる。
『お!』
『おおおおおおおおおお!』
『始まった!』
『きたああああああああああああ!』
『おはようございます!』
『おはよー!』
『始まったあああああああああああ!!』
『待ってました!』
『きたきたきたきたきたあああああ!!』
「みなさん、来てくださってありがとうございます。本日も、よろしくお願いします」
ぺこり、と飛行カメラに向かって頭を下げるルミ。
そうして、探索を開始することにした。
部屋を出て、洞窟の通路を歩き始める。
適当に一人で話しながら、魔物を倒していく。
「今日はのんびり配信にしたいと思っています。私のこととか、みなさんはまだよく知らないと思うので、いろいろ話せていけたらと思っています」
ルミのリスナーは、ルミのことをよく知らない。
まあ、これまで挙げた二本の動画だけでは、ルミの人となりを理解することは難しいだろう。
なので、ルミは自己紹介をして、リスナーに親近感を持ってもらおうと思っていた。
もちろん語れる範囲で……だが。
「何から話しましょうか。まずは私のプロフィールから話したほうがいいですかね……私の年齢は、言ってなかったと思うのですが、18です。それから―――――」
一人で話しながら、出会った魔物を軽々と蹴散らしていく。
ここにはナイトボーンや、アイアンゴーレムなど、そこそこ強い魔物がいるのだが……
ルミは楽勝で叩きのめしていた。
『相変わらず瞬殺だなwwww』
『まあ、ルミなら楽勝だろなこれぐらい』
『強すぎるww』
『アイアンゴーレムを一撃で倒すって……感覚がバグってくるなw』
『※これを普通だとは思ってはいけませんwww』
『散歩気分で強敵を狩ってて草』
『これぞルミ配信だなww』
『このダンジョンはどこや?』
『Bランクの魔物が多いな。まあルミからすると雑魚すぎて退屈だろうなw』
Bランクの魔物を瞬殺していくなど、常軌を逸した光景であるが、リスナーたちは当たり前のものと受け止めていた。
なにしろAランクのドラゴンウルフですら雑魚同然に狩りまくっていたルミだ。
Bランクの魔物を楽々と蹴散らしていても、いまさら驚くことはない。
そりゃそうなるだろう、とむしろ納得していた。
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