第3章31話:コトリとの会話


大学に到着する。


コトリと合流して、1限目の講義室に移動する。


商学科棟の2階の講義室。


ここでは『経済学基礎I』の体験講義が行われる。


講義まで15分ほど時間がある。


中央右奥の席につくルミたち。


コトリは言った。


「ねえねえ、ルミさんの動画見た!?」


「……!!」


ルミはびくっとした。


コトリが言っているのは、2本目の動画のことだろう。


ルミはぎこちない笑みを浮かべながら答えた。


「え、ええ……2本目、投稿してましたもんね、ルミさん」


「そうそう! 2本目も面白かったなぁ。瞬間移動ってすごいよね! ただでさえルミさんって強いのに、もう敵無しだよー!」


「あ、あははは。そうです、よね!」


「でも、生配信は見逃しちゃったんだよね。それだけは残念だったかなー」


やはり予告ナシに配信してしまったことで、見逃す人がいたようだ。


ルミは言った。


「でも、次からは予告があるんじゃないですか? プロフィールページにそんなことが書かれてありましたし」


「そうだよね。予告、絶対にチェックしないと!」


コトリはやはりルミのガチファンである。


そのことに、顔が熱くなってしまうルミであった。


そのときコトリは話題をかえてきた。


「そういえばルミちゃん、講義は何を取るか決めた?」


「はい。だいたい決まってきましたね」


体験講義が行われるのは今週末までだ。


だから週末までには、どの講義を履修するかを決定して、シラバスでスケジュール表を確定しなければならない。


「そっかー。やっぱり毎日ぎっしり履修する感じ?」


「あ、いえ……実はフリーパス試験に受かったので、そこまで無理する気はないですね」


「え!? フリーパス試験受かったの!?」


「はい。先週の土曜に受験して、無事合格をいただけました」


「うわぁ、おめでとう! じゃあ、今年はもう講義に出なくていいんだ?」


「単位的には、出なくても大丈夫ですね。ただ、気になる講義もあるので、そういうのは履修していこうと思っています」


「なるほどねー。こんなにすぐに受かっちゃうなんて、ルミちゃんはすごい人だったんだね」


「そんなことはありませんよ」


「そんなことあるよー! 合格率2%だって教授も言ってたし。すごいことだよ」


「たまたま得意な試験内容だったので、なんとか乗り切れただけですよ」


実際、試験官と剣術の試合をするだけだったから、難なく合格できただけだ。


……とルミは思っているが、実際は元Bランクの試験官とのガチ勝負なので、普通の学生なら敗北し、不合格だっただろう。


ルミの実力がずば抜けているからこその楽勝合格である。


「コトリさんのほうは、講義はもう決めたんですか?」


「ううん、まだ。でも、だいたい固まってきたかな。悩んでいるのがいくつかある感じで」


「一度決めたら途中変更できませんから、慎重に決めないといけませんよね」


「そうなんだよねー」


しばし、そうして雑談を行う。


やがて教授がやってきて、講義が始まった。


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