第2章20話:サークルのチラシ


翌日。火曜日。


朝。


晴れ。


朝食を食べてから、ルミは大学へと向かう。


ちなみに服装は、ブラウスとハイウェストのテーパードパンツだ。


大学の門をくぐると、サークル部員とおぼしき者たちが勧誘を行っていた。


「新入生ですか? よろしければうちのサークルに来てみませんか?」


「1回生の方は是非うちのサークルへどうぞ! お菓子とジュース出しますよ?」


「本日、新歓バーベキューやりますよー! 入部しない人でも来てくださって構いません! お気軽にご参加くださいー!」


ルミも大学生に取り囲まれる。


サークル案内のチラシを渡される。


渡される。


渡される。


渡される。


ちょっと……多い多い!


50枚ぐらいあるよ、コレ。


そしてそんなふうにチラシを抱えていると「あ、こいつ新入生だな」と先輩たちに丸わかりであり、


さらにチラシを渡されていく。


というか、どんだけサークル存在するの!?


「ん……」


そのとき、ふと一人の女性が視界に映りこんだ。


ふんわりした水色のロングヘア。


黄色の瞳。


柔和な顔立ち。


レースシャツにフレアスカート。


おっとりした感じの女子大生。


彼女もまた、チラシを大量に抱えていた。


ルミと同じく、チラシ配りに狙われる悲しき被害者であった。


もはや抱えたチラシの上に、サークル部員たちが勝手にチラシを乗っけていた。


ルミはふと思った。


(あの人……なんでさっさとチラシをバッグに入れないんだろ?)


チラシをアイテムバッグに片づけてしまえば、あんなにアワアワすることないのに。


と思ったが。


いや、人のこと言えないわ……


と思い直した。


なぜなら自分も同じ状況だからである。


「あ……」


そのとき、その女子大生に風が吹いた。


風にあおられて、彼女が持っていたチラシが吹き散らされる。


「あぁ、待って! あっ!」


飛んでいったチラシを取ろうとして、うっかり抱えていた腕を開いてしまい、全てのチラシが地面にまき散らされた。


うわぁ……とつぶやきたくなる光景だ。


「あぁ、ううう、落としちゃったよ~~!!」


女子大生が慌てて拾おうとする。


ルミは、自分のチラシをサッとアイテムバッグへ片付けると、すぐに拾うのを手伝ってあげた。


女子大生がお礼を言ってくる。


「あ、すみませんっ。ありがとうございます!」


「いえいえ」


30秒ぐらいで、あらかた回収できた。


その女子大生は、チラシをアイテムバッグへさっさと収納した。


「あの、ありがとうございました! お礼に、これをどうぞ!」


女子大生はお菓子が入った透明の小袋を差し出してくる。


チョコクッキーのようだ。


「おやつにと思って買ったんですけど、よければもらってください!」


「あ、いえ……お礼なんて別に」


「そういうわけにはいきませんから!」


そう言って女子大生は、なかば押し付けるようにクッキーを手渡したあと、走り去っていった。


それを見送ったあと、ルミも歩き出した。





その女子大生とは、すぐに再会することになった。



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