第2章19話:シラバス



そして、そのあとルミは一度、自分の配信を視聴してみることにした。


実はダンジョンクリア以来、彼女は配信を自分自身で確認していない。


何がそんなにリスナーにウケたのか……分析の必要があると思った。


ルミの一発目の配信動画。


ちなみに動画タイトルは『近くの町のダンジョンを攻略します!~ダンジョン配信者としてデビューしました~』という、平凡すぎる題名である。


さっそく視聴する。


……。


……。


……数時間後。


なるほど、と納得する。


(私、ただのポンコツじゃないですか!!?)


うあぁーーーと心の中で叫んだ。


たとえば、ネットで大盛り上がりの『壁パンチ』。


壁パンチが盛り上がった理由も、ルミのパンチ力に驚いたからではない。


「ルミがイカれた行動を取ったから」である。


実際、ルミが壁を殴り始めたときのコメント欄は「狂気だwww」とか「気がふれたwww」とか、そういうコメントで溢れている。


確かにあのとき、自分は無言で壁を殴ってしまった。


リスナーからすると意味不明な行動だったに違いない。


(しかもスキルプラクティスって……めちゃくちゃ高価なものだったんですね)


最初に拾わなかったあの石が、まさか1億円相当の価値があったとは。


ただでさえ、レア素材の数々を捨て置いてしまったのに……トホホ。


「で、でも……そのおかげで好評になった面もありますし……ね?」


一人で言い訳してみる。


まあ……次からは気をつけるしかない。


とにかく、自分の動画を視聴し終える。





日が暮れたので夕食を食べた。


この日はアジフライ定食を作った。


アジフライとタルタルソース。


ごはん。


サラダ。


モズクの味噌汁。


といったメニューである。


食事が終わって食器を片付けたあと、リビングのクッションのうえに座り込んで、ノートパソコンを起動する。


インターネットを開いてから、鞘坂大学のホームページへアクセスした。


そこからシラバスのページへ移動。


シラバスとは、講義内容やスケジュールについて記した図表のことだ。


このシラバスのページから、どんな講義があるかをチェックしたり、履修したい講義を決定する。


講義一覧を眺めると、本当に多種多様な講義があるとわかった。


たとえば、以下のようなもの。




剣術実習1


剣術実習2


基礎剣術学


魔法学


法学


線形代数学


解析学基礎


音声工学


外国語1


外国語2


美術学概論I


情報物理学


日本剣術原論


探索者実習1


ダンジョン工学


ダンジョンセキュリティ論I


ダンジョン学


アイテム製作実習




剣術学科なので剣術系の科目は必修が多い。


あと外国語も必修のようだ。


それ以外は、だいたい自由に選んで良さそう。


ただし、1回生で受けられる講義は限られている。


そこらへんを踏まえつつ、気になった講義を手帳にメモしていく。


今はまだ、講義を吟味できる【体験講義】期間である。


【本講義】が始まるまでは、気になる講義を好きに体験していいのだ。


ん……


そこで目に留まる文字があった。


フリーパス試験について……と書かれた項目だ。


ルミはそこをクリックしてみる。


するとフリーパス試験に関する案内が出てくる。


ルミはそれにザッと目を通す。


「ふむふむ……」


だいたい、以下のようなことが書かれていた。


・フリーパス試験は各学期に1回だけ受験することができる。


・今週末から試験を受けられる。試験日は土曜日である。


・剣術試験、魔法試験、学問試験の三種類から選べる。


「なるほどなるほど。剣術試験もあるんですね……」


ルミは言うまでもなく剣術が得意だ。


具体的にどんな試験になるかはわからないが、以上の三択から選ぶなら剣術試験一択だろう。


「今週末に予定なんてありませんし、もう受けてしまいましょうか……」


ルミはそう考えた。


炭酸グレープジュースを飲む。


フリーパス試験の受験方法について調べたあと、ノートパソコンを閉じた。


そして横に倒れて、マットレスの上に寝転ぶ。


しばし、だらける。


だらだら……。


だらだら……。


……。


ゆったりした時間。


んーっ。


下宿先での一人暮らし、素晴らしいね。


実家も嫌いじゃないけど……。


一人暮らしも、快適で最高だ。


マンションの上階だから、夜景も綺麗だし。


そのあと。


思いきりリラックスしながら、夜を過ごした。


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