第16話 謎の機体
「……」
光のフォースの持ち主はその光景を見て振り返ると、リューナの元へと戻って行った。
「倒したか?あっけないものだな。よくやった。仮人の割にはよく動くではないか。名はなんと申す?」
「
「そうか、では三空よ、お前には今度食事に連れて行ってやる」
「ありがたき幸せ。ですがリューナ皇女殿下、恐らくですがあのシャドウと名乗った男は死んではおりません。あの男は影の中を移動出来るようです。恐らく影の中を移動して逃げたかと」
「何?そうか。なら影のある場所を封鎖……と言いたいが、それは出来ぬしな」
リューナは三空の話を聞いて少し悩む。
「よし、皆の者に命じ……」
「無駄ですよ」
何かを言おうとした瞬間、突如声が聞こえた。その声は、上から聞こえる。見上げるとそこには湊月がいた。
湊月は壁などにかけられている国旗を掲げるための棒の上に乗ってリューナ達を見下ろしている。
「お前!生きていたのか!?」
「私があんなことでやられるとでも?ご冗談を」
「そうか、お前は私に殺されたいのだな」
「フッ、愚かな。リューナ皇女殿下、私を殺せばここにいる者は皆死ぬことになるが、それでも良いのですか?」
湊月はそう言って足元を指さした。リューナ達が足元を見ると、足元には影の針がこっちを向いていた。
「っ!?脅しのつもりか!?」
「そう見えるなら私に攻撃してみたらどうですか?それでここにいる皆さんが死んでも私は知りませんがね」
湊月の言葉を聞いてリューナは黙り込む。恐らくだが、ムスペルヘイムの誰かが湊月を殺そうと思えば簡単に殺せる。だが、今ここにはムスペルヘイムの地位の高い貴族や皇族がいる。
湊月はそんな人達を全員人質にとったのだ。だから、リューナは手を出したくても手を出せない状況になってしまう。
「私がやります」
三空がそう言って剣を構えた。しかし、それをリューナが止める。
「やめておけ。あの男の言っていることは本当だ。恐らくあいつを殺してもこの技は発動する」
「っ!?」
「いい判断ですね。さすがは
「貴様に褒められても嬉しくもない。そんなことより貴様の要求はなんだ?」
リューナは上から目線で聞いてきた。湊月はその言葉を聞いて少しだけイラッとしたがそれを感情に出さないように平然を装う。
「……それを言ってあなた達が要求を受け入れてくれるとは思えませんね」
「時と場合によっては受け入れてやらんこともないぞ」
「……そうですか。なら、言いましょう。私達の要求は、日本の解放だ!いや、日本だけじゃない!不当な差別を受ける国を全て解放することだ!……今すぐにでも解放してください。受け入れてやらんこともないんですよね?」
湊月は少しだけ怒りの気持ちを言葉に混じえながらそう言った。そして、仮面の下で怒りにまみれた表情をする。
「……それは、我々への宣戦布告ととっても良いのか?」
「どう取ってもらっても構いせんよ。ただ、そちらがその気なのであれば、こちらも本気を出すだけです。我々宵闇の月華団は全力であなた達を潰す。それではまた会いましょう」
湊月はそう言って影の中へと入っていく。その時ついでにスイッチを押した。それは、爆弾のスイッチ。
湊月はシェイドに頼んでこっそり爆弾を仕掛けていたのだ。そして、そのしかけた爆弾はリューナ達がいるメインホールを崩していく。
「っ!?よくも……!」
リューナ達はすぐに逃げようとした。しかし、到底逃げ切れるような速さじゃない。
「リューナ様!」
その時、突如リューナを呼ぶ声がした。その数秒後にアサシンブレイカーが崩落していく天井を止めに来る。
だが、そのアサシンブレイカーはどこかいつも見るものとは形が違った。
それは、『第2世代アサシンブレイカー、カロン』である。ちなみに、いつも見る形のやつは『第1世代アサシンブレイカー、イガルク』と言う。
どうやらリューナの危機を知った親衛隊が助けに来たようだ。
「……シャドウ……私達に喧嘩を売ったこと後悔させてやるぞ」
リューナの声が小さくその場に響き渡った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━それから1時間後……
「フフフ……何だ?やれるじゃないか……。こんな非力な俺でもアイツらに一泡吹かせてやった。フフフ……フハハハハハ!」
湊月は暗い森の中で1人高々と笑った。そして、影の中から山並と玲香をだす。そして、隠してあったアサシンブレイカーの中に横たわせると、発進して月華団の元まで向かい始めた。
「……このイガルクも、それ以上の性能のものが来れば負ける。気を受けなければ……」
そう呟きながらこっそりバレないように進んでいく。しかし、それは突然現れた。まるで、異世界から召喚されたかのように目の前に顕現した。
「っ!?なんだあの機体は!?カロンか?いや、違う。なら第3世代のテュロクか?だが、機体の形が違う。一体何者だ?」
湊月はその機体を見て少し疑問に思いながらも、いつでも戦えるように構えた。
「君か……指揮官は。シャドウと名乗ったな。悪いが君には連れていかせてもらう」
その謎の機体に乗った人はそう呟いていきなり襲ってきた。
「っ!?クソッ!いきなりか!声からして男だが……あの光野郎とは別人か?あの光野郎は声からして女だったからな。だったらこいつは誰だ?」
湊月は思考をめぐらす。そして、何とか攻撃を防ぎながら打開策を考える。しかし、全くいい案が思いつかない。
「この野郎が……!」
湊月は何とか押し返すとすぐに体勢を整えて、手首に収納されているワイヤーロープを飛ばした。
そして、一気に収納することで飛び上がりビルの屋上へと乗る。そして、そのまま勢いを殺さず逃げ出す。
しかし、その謎の機体はすぐに追いついてきた。
「なんだと!?なら、これはどうだ!?」
湊月はそう言ってワイヤーロープを使ってビルの床を破壊する。そして、もう片手のワイヤーロープを伸ばして違う場所に移った。
「アイツ、無駄に被害を増やして!」
男はそう言ってワイヤーロープを使いすぐに湊月に追いついてくる。
「……このままでは逃げきれないか……!っ!?」
遂に、謎の機体が湊月の機体に攻撃を与えた。そのせいで多少ダメージを負ってしまい、コックピットで危険信号が流れる。
「ダメだ……!やられる……!こんなところでやられる訳には行かないのに……!」
「シャドウ!変わってください!」
その時、玲香が後ろからそう言ってきた。湊月はその声を聞いた瞬間に椅子から離れる。すると、すかなり慌てた様子で玲香が椅子に座り、アサシンブレイカーを操縦し始めた。
「っ!?何!?動きが変わった!?」
当然、突然動きが変わったアサシンブレイカーを見て男は動揺する。しかし、それでもすぐに対応してくる。
「パイロットが変わったのか?まぁ、どっちでもいい。このアポロンなら殺れる」
「っ!?嘘っ!?こんなに強いなんて……!」
「玲香!少し耐えてくれ!」
湊月はそう言って影の中へと入り影を通って外に出る。
「え!?シャドウ!?どうして!?」
玲香はフォースを使った湊月を見て目を丸くする。しかし、今はそんなことを気にしている暇は無い。今やるべきことは、目の前にいる敵を倒すこと。
「舐めんなぁ!」
「っ!?このパイロット、強い……!なら、早めに潰しておくべきだ!」
そう言ってワイヤーロープを出して攻撃してくる。その速さはとてつもなく、玲香は右腕の部分に突き刺されてしまった。
「きゃあ!」
「このまま押し切る!」
「そうはさせない。準備は完了した。玲香、少し下がってくれ」
「了解です!」
玲香は湊月の合図を受け少し後ろに下がった。湊月はそれを見て、さっきまで玲香がいた場所に銃を発砲する。
すると、突如地面が大爆発した。
「っ!?なんだ!?」
「きゃあ!?なに!?」
「玲香、今すぐ逃げろ」
「え!?あ、はい!」
玲香は湊月の言葉を聞いてすぐに発進し逃げる。そして、遂に謎の機体から逃げることが出来た。
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