第14話 乱入
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……湊月は静かに街へと向かった。それは、ムスペルヘイムの人々が住む街だ。
湊月は仮面を外し、普通の服を着て歩く。基本的にこっちにいる日本人は殺されることはない。なぜなら、こっちにいる日本人はムスペルヘイム人になったと思われているからだ。
確か、『
湊月はそんな街中を歩いてある店に来た。それは、闇の商人がいる店。湊月はそこに入っていく。
「いらっしゃい。今日は何用で?」
中に入ると男がそう言った。その男は、いかにも闇の商人です。と、言わんばかりの風格だ。そして、ここはバーだ。バーが似合うことで上手くカモフラージュしている。
「武器や服を作って欲しい」
「冷やかしなら帰ってくれ」
「そうか……冷やかしに見えるか。なら単刀直入に言おう。死にたくないのなら作れ」
湊月はそう言って影で男の首を絞めた。男は苦しそうにもがく。しかし、湊月は止めない。男はもがき苦しみながら湊月に向かって頷いた。すると、影の力が弱まる。男はそんな湊月の顔を1度見るとすぐに裏に行き武器を出してくる。そして、服も少し見せてきた。
「ここにあるものじゃダメか?」
「……別に構わん。これで良い」
そう言って、湊月は服を手に取る。そして、武器も色々と見て全て影の中にしまいこんだ。
「じゃあ金を払ってもらう」
「それは無理な話だ。”忘れろ”」
湊月はそう言って影を男の頭に差し込む。そして、記憶を操作する。すると、男は意識を失った。
湊月はそれを見て不敵な笑みを浮かべると、何も言わずにその場から去っていく。そして、誰も見ていない路地裏でひっそりと影の中へ入った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━それから1時間後……
テレビで緊急速報が流された。それは、湊月が言った通り、ギュメレイルが殺されたことについてだった。
当然その話を聞いたムスペルヘイム人は泣く。仮人と呼ばれていた日本人は少し心の中で喜ぶ。
そんな、色々な感情に包まれながら黙祷を捧げられようとしていた。
しかし、その時それは起こった。この放送を見ている人が誰も予想しなかったことが。
「フハハハハハ!」
「「「っ!?」」」
突如として笑い声が響き渡る。その声がした方向を見ると、男が1人いた。その男は黒い服に黒いマント、貴族のような服を着ていて、そして仮面を被っている。
「何者だ!?今何をしているのかわからんのか!?無礼だぞ!」
恐らくギュメレイルの親族だろうと思われる人がそう叫ぶ。それは女だ。そして、武器やら何やらいいろと持っている。
彼女はリューナ・レウ・ムスペル。ギュメレイルの親族で姉にあたる人物だ。そして、彼女には異名がある。それは、『不敗の
「おい!なにか言え!」
「良いでしょう。では、自己紹介から。我が名はシャドウ。全ての悪を断罪するものだ」
「シャドウだと?まずはその仮面を外せ!この悪党が!」
「いきなり悪党扱いですか……。まぁいいでしょう。我々はあなたに興味は無い。我々は、宵闇の月華団!悪を断罪するもの達だ!ムスペルヘイムの者達よ!我々はここに宣言する!日本人を見下し人種差別をする者を我々は許さない!日本人よ!立ち上がれ!戦う意思のあるものは皆我々の元へ集まるがいい!」
湊月は高々とそう宣言する。そして、振り返りその場を離れようとした。その時だった。
「待て!」
予想通りリューナが刃向かって来た。
「国際放送でここまでしておいて逃げるつもりか!?」
「逃げる?私は戦いに来たわけじゃない。世界中に我々の存在を知らせに来ただけですよ」
「そんなことはどうでもいい!お前らを国家反逆罪で処刑する!」
リューナはそう言って背中の剣を抜き突きつけてきた。
湊月はそれを見て1つも慌てる素振りを見せない。しかし、一緒に来ていた玲香と山並はかなり慌てている様子だ。
「お前ら、作戦通りに頼むぞ」
湊月は小さくそう呟いた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━30分前……
湊月は服を手に入れると玲香の元へと戻ってきた。その手にはスーツケースがある。
湊月は玲香の前でそのスーツケースを開けた。すると、中から隠密性が高そうな黒い服が出てくる。
「動きやすさも抜群、隠密性も高い。そして、量産可能な物だ。月華団の団員にはこれを着てもらう」
「これ……凄いですね。着てみていいですか?」
「あぁ、構わないよ」
「……」
玲香は着てみると言ったものの、なかなか着替え始めない。
湊月が疑問に思っていると、玲香は少し頬を赤らめて言ってきた。
「あの、見られるの恥ずかしいです……」
「ん?あぁ、すまん」
湊月はそう言って後ろを向いた。その方向にはアサシンブレイカーが隠されている。
「……ん?そう言えばだけど、玲香の苗字は
「っ!?そ、それは……触れないでください……」
玲香はそう言って目をそらす。どうやら訳ありなようだ。これ以上詮索するのは辞めよう。
「そうか、悪かったな」
湊月はそう言う。
「い、いえ、謝ってもらうほどじゃないですよ!」
玲香は慌ててそう言う。どうやら玲香はなんとも思ってないらしい。いや、何とも思ってないと言うより慣れていると言った様子だ。これも、今後改善しなければならない。もしものことがあるからな。
「シャドウ、着替え終わりました」
「そうか、着心地はどうだ?動きやすいか?」
「そうですね。胸のところが少しきついくらいですけど、特に支障はありません」
「そうか……そこは要改善だな。今のところはそれでも我慢してくれ。それと、何でここに山並が居る?」
「っ!?」
玲香はその言葉を聞いて目を見開き言葉を失う。そして、目を逸らし俯く。
「俺が気が付かないと思ったか?」
「いえ……申し訳ありません……」
「……謝るのはいい。お前らの考えてる事はわかる。とりあえず出てこい」
湊月がそう言うと、山並が木の影から出て来た。
「よく分かったな」
「当たり前だ。お前らの様子を見ていたら分かる。どうせ俺の招待を知ろうとしていたのだろ?」
「「「っ!?」」」
なんと、湊月は山並達の考えていたことは全てお見通しらしい。
「ちょうどいい。山並、お前を呼びに行くところだったんだ。つけられてないようだからな。これを着てくれ。作戦はその後話す」
そう言って山並に服を渡す。山並はそれを受け取るとすぐに着替える。そして、湊月の前に立った。
「問題はあるか?」
「いや、無い。動きやすさもバッチリだ」
「そうか。では、作戦を説明する……」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……そして今、山並と玲香は死ぬ思いで後ろに走り出した。
今湊月たちがいる場所は2階の廊下の前。振り返ればすぐに逃げることが出来る。
リューナはそんな2人を見てすぐに足を強く踏み込んだ。そして、湊月を飛び越え山並達の前に出ようとする。しかし、途中で湊月が糸を引くのが見えた。
その刹那、リューナの頭に痛みが走る。気がつくと、天井が降ってきていた。
「馬鹿め。罠があると思わなかったのか?」
湊月はそう言ってリューナに近づき顔を踏みつけた。そして、剣を構える。
「死ね」
そう言って剣で突き刺そうとした時、突然目の前に黄色く光る人が現れた。
「……っ!?」
気づいた時には遅かった。剣は折られ、逆に剣を突きつけられている。
「あなたね。陛下を殺したのは?」
目の前の人はそう言って突き刺そうとしてくる。しかし、湊月は何とかそれを避けるとすぐに目の前の人を蹴り飛ばした。
「この……!光野郎が!」
湊月はそう言ってすぐに振り返り山並と玲香を後ろから殴り気絶させる。そして、影の中に放り込むと体中に影を纏わせた。
「シャドウ!覚悟!」
リューナがそう言って剣で切りつけてくる。湊月はそれを避けるとすぐにその剣を折ろうと蹴ろうとした。しかし、光のフォースの持ち主がそれをさせない。
「クソ……!」
湊月は小さく呻いた。
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