第13話 影の侵食
「シャドウだと?無礼だな。私はムスペルヘイム皇国の王子、ギュメレイル・ラウ・ムスペルだぞ。まずその面を外してもらおうじゃないか」
「あなたこそ無礼ですよ。人と話す時はそのふんぞり返った態度を変えないといけませんね」
「何!?貴様、殺されたいのか!?おい!衛兵!」
「フフフ、いくら呼んでも来ませんよ。皆殺しましたからね」
湊月はそう言って剣を構えた。この剣は影で作りだしたものだ。湊月はそれを構えてギュメレイルに突きつけた。
「最後に聞こう。なぜ日本を攻めた?なぜ日本を下に見る?なぜ平等に生きることが出来ない?」
「そんなの決まっている。貴様らが軟弱で敗者だからだ」
その刹那、突如として扉が開けられた。いや、正確に言うなら開けると言うより壊すだ。扉は蹴破られ壊されている。
そして、そこから5人ほど人が入ってきた。しかも、見覚えがある。
「湊月、まずいよ」
シェイドが小さな声でそう言ってきた。
「遅かったじゃないか。ここまで侵入を許すとは、貴様らには後で罰を与える。さぁ、さっさとこいつを殺せ」
ギュメレイルはそう言った。その瞬間、突如目の前に剣が突きつけられる。
「っ!?」
湊月はその剣をギリギリのところで避けた。そして、少しその場から離れてその人を見つめる。
さっきは光っていたからよく分からなかったが背は小さいらしい。だからかすごく早く見える。そして、手に持っているのは何かしらの剣だ。切れ味はかなり良さそう。
そして何より速い。恐らくこいつの
そう、部屋に入ってきたのはあの時に見た光のフォースの持ち主だ。どうやら戻ってきたらしい。
「クソッ……」
湊月は呻くように呟くと、バク転をしながら後ろに下がる。そのついでにギュメレイルに影を撃ち込んだ。
そして、ドアへと走る。しかし、それを食い止めようと、光のフォースの持ち主が斬りかかってきた。
湊月はそれを影の剣で受け止めると、すぐに影を全員に対して撃つ。しかし、光のフォースの持ち主には通用しない。剣で弾かれてしまった。しかし、それ以外の全員には当たった。
「今は貴様らと戦っている暇は無い。ここは退かせてもらう」
そう言って部屋の外に出たが、外に出ると大量の兵士がいた。
「残念ね。さよなら」
光のフォースの持ち主がそう言って剣を構えた。次の攻撃は避けられない。確実に殺される。
湊月はそれを理解すると勢いよくその場を飛び真っ直ぐ進む。その先にあるのは大きな窓ガラスだ。湊月はそれを蹴破り外に逃げられるようにした。しかし、ここは最上階。大体15mほどの高さがある。こんなところから落ちれば一溜りもない。
しかし、湊月は兵士を1人だけ掴むとそこから落ちた。ついでにその場に影を残して。
湊月は近づいてくる地面を見つめながら兵士の心臓を剣で貫く。すると、兵士は一瞬で絶命し動かなくなる。湊月はそれを確認すると、兵士を壁に擦り付け、サーフボードのようにして壁を滑り始めた。
そして、地面がもうそこまでというところまで落ちてくる。そこで湊月は少しジャンプをしてその場から飛んだ。
すると、兵士は地面に激突したが湊月はなんともなく地面に着地する。そして、すぐに影を自分の体にまとわりつかせて影の中に入った。
「……逃げられた」
「してやられたな。貴様らには後で俺の部屋へと来てもらう」
ギュメレイルは光のフォースの持ち主達にそう言う。光のフォースの持ち主達はその言葉を聞いて少し俯いた。
そして、つけていたゴーグルとガスマスクを外して言う。
「次は必ず殺します。ですから、今回はお許しを」
「ダメに決まってるだろ。そうやって甘やかすからこんな失敗を犯す。お前達は体でおしえてやらんとわからんようだな。後で俺の部屋に来い。そこで教育して……ゲホッ……やるよ……グフッ……!ゲホッ!ゴホッ!」
その時、突如ギュメレイルが咳払いをした。すると、出てきたのは空気や唾などではなく、真っ黒に染まりあがった血だった。
「っ!?何で……!?」
当然その場の全員はそれを見て目を大きく見開く。そして、すぐにその場を離れた。ギュメレイルは誰かに助けを求めるが、誰も助けようとしない。いや、出来ない。
そして兵達は逃げようとした。しかし、光のフォースの持ち主と一緒にいた女性達が突然黒く染まり始め兵達は逃げられなくなる。
さらに、兵達はどんどん黒く染っていく。光のフォースの持ち主は、フォースを使い何とかその場から脱出すると、すぐにギュメレイルを助けようとする。だが、時すでに遅し。ギュメレイルはその場の全員を影で飲み込み、さらに自分まで飲み込まれてしまった。そして、その場にいた兵達は、光のフォースの持ち主を残して全員消えた。
「そんな……あの男……シャドウ。絶対に許さない」
その言葉が、誰もいなくなった部屋に小さくこだました。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……月下団は……
全員退却を終え、近くにあった建物に逃げ込んだ。ここは、事前にシャドウが言っていた場所だ。シャドウが言った建物には地下があり、そこから全員合流することが出来る。
玲香はあの後シャドウに言われた通り、振り返ることなく逃げた。そして、少し遠くだが、森の中にアサシンブレイカーと一緒に隠れている。
『……山並さん、聞こえますか?山並さん』
『玲香か!?今無事か!?』
『はい。今、森の奥に隠れています。今のところは見つかってません』
『そうか。良かった』
『あ、ありがとうございます。あの、私達ってこれからどうしたら良いんでしょうか?1度合流した方が良いでしょうか?』
『そうだな。1度合流して話し合った方が……』
「それはダメだ」
その時、玲香の後ろで声がした。気がつけば、いつの間にかシャドウがいる。
「シャドウ!?いつの間に!?」
『何!?シャドウがそこにいるのか!?』
皆は玲香のところにシャドウがいると知って慌てる。しかし、シャドウは何一つ慌てない。
「玲香、良くやったな。だが、まだ終わりでは無い。恐らくこれから1時間後にテレビで指揮官であるギュメレイルの死が放送される。我々はそこに乱入する」
「っ!?」
『『『っ!?』』』
シャドウの口から放たれた言葉にその言葉を聞いていた全員が絶句した。しかし、シャドウはそんなことは全く気にせずどこかに行こうとする。
「ちょっ……どこに行くの!?」
「少しイメチェンだ。これからテレビを乗っ取って世界に我々の存在を知らしめる。その時に、曖昧な服を着ていれば覚えられなくなる。だから、お前達の服を用意する。統一感がなければ人々の頭に残りにくいことがあるからな」
「え、あ、わ、分かりました……」
『待て!1時間後に乗っ取るって……簡単に言うけどどうやるんだ!?また軍と戦うのか!?』
『戦う?別にお前らは戦っていない。あれは隠密行動をしただけだ。それに、戦いはしない。先程わかったことだが、フォースを使えるムスペルヘイムの兵士は少ないらしい。フォースを使えるのは貴族か、ある一定の資格を持つ者、とにかく強いやつ、金を積んだ者くらいだ。だから、そんな雑魚に時間を使うのは無駄だ』
『あ、あぁ……そうか……』
『考えることは良い事だ。だが、今は俺の言ったことに集中しろ。世界を変えたいと思うのならば、それだけの行動をしなければならない。これは、そのための最初の一手だ』
シャドウはそう言った。山並達はその言葉に納得したのかは分からないが静かになる。シャドウはその様子を感じとり、その場から離れていく。
「作戦はまた後で伝える。じゃあまたな」
シャドウはそう言って森の中へと入って行った。その方向には都市がある。玲香はそんなシャドウをただ見つめるしか出来なかった。
『……なぁ、皆聞いてくれ。あの男を信じていいのかについて調べたい』
山並はそういってシャドウの秘密を調べようと心に決めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます