第12話 作戦成功
ムスペルヘイムの軍は倒壊するビルを見て慌てた。なんせ、突然ビルが倒壊したということは、近くに敵がいると言うことだからだ。
当然すぐに戦闘態勢を取る。しかし、敵がどこにいるか分からない。そう思っていると、突如目の前が真っ黒になり、意識はなくなった。
「やったか?」
「あぁ。確実に死んでいる」
「言われた通り武器は全て奪え。そしてすぐに離れろ」
そう言って男達はハイエナのように武器や防具を奪っていく。
湊月はその様子を影を使って確認すると、不敵な笑みを浮かべた。
湊月の合図で月華団は本格的に動き出した。しかし、ムスペルヘイムの軍は未だビルが突然壊れたことに慌てふためいている。
『β隊はそのままその場で待機しろ。2分後に地下から脱出し爆破しろ。α隊は近くの物陰に隠れ待機しろ。ω隊も同じだ。玲香、お前は今すぐに真っ直ぐ前進しろ。建物は全て壊して構わない。恐らくそのまま動けば相手はアサシンブレイカーを出してくる。玲香をそのまま囮にしながら兵を殺していく』
『『『了解!』』』
返事がした後に玲香が乗ったアサシンブレイカーが前進し始めた。湊月はそれを見て少しだけ考える。
(相手の陛下とやらが馬鹿では無いのであれば、この後確実にアサシンブレイカーを4機出してくるはずだ。4方向から玲香の動きを封じれるからな。さぁ、誘いには乗ってやったぞ。お前達はどう出てくる?)
湊月は少しだけ目を閉じ開けると、不敵な笑みを浮かべて纏っている影を1度消した。
「どうしたの?湊月」
「シェイド、少しだけこの場を離れるぞ。誰か来る」
そう言って少し離れた建物の影に隠れる。すると、その5秒後にその場にムスペルヘイムの兵がくる。だが、どこか異様な雰囲気だ。嫌な予感しかしない。
「っ!?アイツは……!」
「どうした?知ってるのか?」
「アイツはライトニング。僕と真反対の奴だよ……!」
「なるほど。光の
湊月はそう言って見つからないようにその場を離れた。
━━それから1分30秒後……
ピピッ……
「ん?」
通信機から音が聞こえた。誰かが自分と話そうとしているらしい。周波数からして月華団だ。
『どうした?』
『シャドウ!マズイです!アサシンブレイカーが4機来ました!』
『玲香、お前はその場を動くな。そうすれば、相手はお前が何もしないと勘違いして近寄ってくるはずだ。そうしたらジャンプをしてそこから離れろ。だいたい相手が10メートル以内に来た時にジャンプしろ』
『り、了解!』
湊月はそう言って建物の影から玲香のいる方向を見る。やはり、4方向からアサシンブレイカーが迫ってきている。
思った通りだ。どうやら相手も馬鹿では無いらしい。
あと20m……15m……10m……
「今!」
玲香はそう叫んで大きく飛び上がった。その瞬間、さっきまで玲香がいた場所が大爆発して地面が崩落した。
「えっ!?」
「っ!?」
全員驚愕する。どうやら玲香がいた場所はβ隊が爆弾を仕掛けた場所の真上だったらしい。だから、β隊が湊月の指示通り爆発させたため、その上にいたアサシンブレイカーはその爆発に巻き込まれたのだ。だが、それだけではアサシンブレイカーは倒せない。しかし、地面が崩落したことでその瓦礫に押しつぶされて、アサシンブレイカーは動かなくなる。
『お前ら、振動に備えろ』
湊月は通信機に向かってそう言った。その5秒後にムスペルヘイムのアサシンブレイカーが大爆発する。どうやら潰された時にアサシンブレイカーを動かしていた謎のエネルギーが大爆発したようだ。
その様子を見ていた人達は全員驚きを隠せない。それは、月華団も同じ。自分達がやったことだが、それは指示をされてやったこと。
そうなると、当然シャドウという存在を畏怖する。なんせ、こうなることを予想して指示を出していたのだから。
だが、これが偶然の可能性もある。そうだった場合はまだ大丈夫だ。これが必然だった場合はかなりやばい。なんせ、こうなることが分かっていたのだから。この男を敵にしてはいけない。月華団の全員がそう思った。
しかし、月華団はそれ以上に興奮していた。あれだけ最強と言われ日本を苦しめてきたムスペルヘイムの軍を、たった1人の策略で、かつ自分達の力で倒したのだから。
だから、月華団の全員……いや、それ以上だ。今この反乱は世界中に中継されている。だから、この状況を見た人達はこの反乱している人達に希望を見いだした。
『やったぁぁぁぁ!』
『俺達の力でやったんだ!』
『遂に一矢報いることが出来たわ!』
通信機からそんな叫びが聞こえてくる。しかし、まだ終わりでは無い。
『お前達、まだ終わりでは無い。相手の指揮官を潰さなければ、敵は無限に湧いてくるぞ』
『っ!?そ、そうか……。俺達は何をすればいい?』
『お前達は1時撤退をしろ。恐らく相手側もこれだけのことをやられて何もしてこないはずがない。囲まれる前に撤退だ。玲香、お前は前進しろ。そのまま真っ直ぐ行ったところに指揮官のいる建物がある。俺も今すぐそっちに行く』
『り、了解!』
湊月の言葉を聞き、月華団は撤退を始める。退路は湊月が事前に伝えておいた物だ。
玲香はアサシンブレイカーを前に進める。そして、建物を壊しながらムスペルヘイムの兵をけ散らかして行く。
「ちょっと待って……シャドウはどうやってここに……」
ふと玲香は疑問に思いそう呟く。すると、突如コックピットが開かれた。
「っ!?誰!?」
「俺だ」
そう言って入ってきたのはなんと湊月だった。湊月は全身に影を纏わせ誰かわからないようにしている。よって、玲香からしてみれば湊月ではなくシャドウだ。
「シャドウ!どうやってここに!?」
玲香は驚きのあまり大きな声でそう聞く。
「こうなることを予想して近くのビルにいた。そこから飛び乗った」
「そうだったんだ……。凄い」
玲香は驚きすぎて無意識にその言葉を呟いていた。だが、湊月の言ったことは嘘である。当然離れたところから見ていて、影を使って移動したに決まっている。
「それより玲香、前を見ろ。あれが指揮官のいる建物だ」
そう言って見えてきたのは何台ものアサシンブレイカーに守られた小さな要塞のようなものだった。
その要塞は壁に囲まれており、かつ中に城のようなものが見える。
「見たか?あれが動く要塞。”
「はい!了解です!」
湊月はそう言ってコックピットを開け外に出る。そして、近づいてくる要塞を見て殺気を強めた。
そして、目の前に来て玲香がアサシンブレイカーを左に急旋回させ逃げた。何台かのアサシンブレイカーは玲香を追って出ていく。残ったアサシンブレイカーは湊月を打ち殺そうと銃を向けてきた。
「無駄だ。”消えろ”」
湊月はそう言って湊月に銃を向けてきたアサシンブレイカーと、玲香を追っていったアサシンブレイカーを影で飲み込んだ。
「「「っ!?」」」
それを見ていたムスペルヘイムの兵達は皆動揺した。なんせ、突如アサシンブレイカーが影に飲まれたのだから。だが、幸いなことにテレビの取材はその様子を捉えていなかった。
「何だ今のは……!?」
ムスペルヘイムに兵はそう言って驚きの言葉を漏らす。その瞬間、湊月が影を使ったのを見ていた兵士は全員影に飲み込まれ殺された。
「フッ、この能力は役に立つな」
「どう?集中すれば心の声も聞けるでしょ」
そう言って湊月とシェイドの2人は不敵な笑みを浮かべる。そして、凄まじい速さで要塞の中を駆け抜けていく。その姿を誰も捉えることは出来ない。なんせ、見る前に殺されるからだ。
湊月達は要塞を駆け抜け指揮官のいる部屋の前まで来た。扉を開け堂々と中を歩く。
「っ!?何者だ!?」
「初めまして。我が名はシャドウ。我はこの世界の全てのあくを許さない。悪事を働くものに正義の裁きを与える者だ」
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