第8話 影の準備
━━湊月が去ってからレジスタンス達は戸惑っていた。1度も顔を挙げずに地面に這いつくばりながら1箇所に集まる。
「もう顔を上げていいのか?」
無線にそう聞いても答えは返ってこない。どうやら無線を切ってあるらしい。こっちからかけようにも、湊月がどうやって繋げたかも分からないのに繋げられない。
「私が顔をあげるわ。……っ!?」
レジスタンスの1人が顔を上げた。すると、突然言葉を失って黙り込む。
「どうした!?何があった!?」
「……皆……顔を上げて……」
小さくつぶやくように枯れた声でそう言う。レジスタンス達は恐る恐る顔を上げた。すると、目の前には驚くべき光景が待っていた。
なんと、5機のアサシンブレイカーが膝から下だけ残してそこに立っていたのだ。だが、膝から上がないからもう壊れている。
だが、驚くべきところはそこだけじゃない。なんと、そのアサシンブレイカーの膝から上にあるもの全てがなくなっているのだ。だから、ビルなどの建物もなくなっている。
「一体何をしたらこんなことに……」
その場の全員はその光景を目の当たりにし、言葉を失う。
「とりあえずここから離れましょ」
「そうだな。いつ軍が帰ってくるか分からないからな」
レジスタンス達はそう言って急ぎ足でその場から離れていった。
━━場所は変わってムスペルヘイム軍セカンドロケーション支部本拠地……
「何!?軍が壊滅しただと!?」
「はい。先程アサシンブレイカーの反応が消え、不思議に思い5機向かせました。しかし、その反応も途絶え……」
「敵は何人だ!?」
「まだわかっておりません。レジスタンス軍は全部で10人程だったのですが、その中にはそれほどまでに強い者はいなかったかと思えます」
「なら、外部の者と手を組んだか」
「追いかけますか?」
「いや、やめておけ。相手の情報が掴めない以上、深追いするのは愚かな選択となる。1日待て。それで何も起こらなかったらルーザーを虐殺しろ」
「了解しました。全ては陛下の御心のままに」
そう言ってムスペルヘイム軍の男は目の前の男に頭を下げる。そして、目の前にいた男は立ち上がり窓まで移動して外を見た。
(見てろよ……!この私の経歴に傷をつけた不届き者が……!)
その男は拳に力を入れて再び椅子に座った。
━━再び場所は変わって街の路地裏……
湊月は1人歩いていた。その先には闇の取引等を生業とする店がある。湊月はそこを目当てに影の中を移動してきたのだ。
「湊月、本当にやるのかい?別にもう少し時間を置いてもいいんじゃないかな?」
「ダメだ。今この機会を逃すとレジスタンスは壊滅してしまう。そうなる前に俺がレジスタンスを……いや、日本人を掌握する。シャドウという希望で日本人を照らすんだ」
湊月は少し怒りを混じえながらかつ、優しい笑顔でシェイドにそう言った。シェイドは少し心配そうな表情をしていたが、すぐに不安は無くなったらしい。
湊月はそんなシェイドを一瞥して店の中へと入っていった。
カランコロン……
店のドアが開かれる音がする。
「いらっしゃい……」
店の奥からそんな声が聞こえてきた。
「本日は何用で?……て、まだガキじゃねぇか。ここにおもちゃはねぇよ。ガキはデパートのおもちゃ売り場にでも行きな」
そう言ってハエを払うような仕草をする。しかし、湊月は何も言わずにその男の前まで行く。どうやらこの男が店主らしい。その店主は湊月に対して少しいやそうなそうな顔をする。
「これを作ってくれ」
「あ?だから作らねぇって……っ!?」
男は湊月が見せたものを見て言葉を失った。なんと、それは高性能な衣装だったのだ。黒いフードが着いたマントに、黒い動きやすい貴族が着るような服、さらに仮面だ。
「お前、こんなの作って何をする気だ?」
「黙秘する。”黙ってやれ”」
湊月は右目で男の目を見つめながら言った。
ここに来る道中シェイドから色々聞いたが、影にはいくつか効果があるらしい。
1つ目は、単純に影を操ることだ。影を操ることで相手を飲み込み殺す。
2つ目は、影を操ることの強化バージョンだ。影を操るだけだと飲み込む以外に殺せないが、剣の形に変えたりすることができる。それで切り殺すことも可能だ。
3つ目は、影の中を移動できる。影の中を移動することで、相手から干渉されずに移動することが出来る。
4つ目は、影で相手を操ることが出来る。影を相手の体の四肢に流し込む、もしくは体全体に流し込むことで相手の身体を操ることが出来るというものだ。
5つ目は、相手を乗っ取ることが出来るというものだ。相手の脳に干渉することで相手の記憶をいじったりすることが出来る。
まだほかにも色々あるが、今はこれくらいで良いだろう。そして、今回はその相手を乗っ取る技を使った。
「……」
さぁどうだ?成功したか?
「……了解しました」
男はそう言って湊月が提案した物の制作に取り掛かった。
「3時間で作れ」
「了解しました」
次も成功だ。
(フッ、無様な。人のことを下に見るからだ。さて、出来るまでここで待たせてもらおうか)
湊月は心の中でそう考えて近くにあったソファーに座った。
━━それから3時間が経った。男は店の奥から出てきて湊月を呼ぶ。
「出来ました」
「フッ、上出来だ。”お前はこれからこのことを全て忘れろ。俺が来たことも、俺がお前に作らせたことも”」
湊月はそう言って店から出て行った。
「……ん?あれ?俺何してたんだ?」
男はとぼけて周りを見渡す。どうやら記憶の改ざんも成功したようだ。湊月はその様子を見て安心したのか不敵な笑みを浮かべながらその場を後にした。
「……湊月、それなんなの?」
「これは正体を隠すために使う。それと、希望の象徴にな」
そう言って恐怖心を強くするような不敵な笑みを浮かべる。そして、路地裏の奥の方へと入って行き暗闇の中影の中へと入って行った。
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