第7話 影の反逆者の覚醒

 アサシンブレイカーが消されたことによってその場に光が差し込んだ。そして、アサシンブレイカーが消されたということは、当然アサシンブレイカーの膝より上にあった建造物も消される。


 湊月はそれを見て簡単の声を上げた。そして、シェイドの顔を見る。こんな小さな生物にこんな力があったとは……


「っ!?まずい!分身が殺られた!」


「何!?」


 シェイドが突然そんなことを言い出した。その時、2人は嫌な予感がした。2人は急いで桜花の元まで走った。


「桜花!……っ!?」


 湊月は桜花を待たせていた側溝まで急いで戻ると、名前を叫びながら中を見た。すると、そこには驚きの光景が待っていた。


 なぜか、男がいる。そして、その後ろに服を乱雑に脱がされ局部から白濁の液体を垂らし、まるで心を失ったかのように放心する桜花が倒れていた。


「なっ!?」


「遅かったな。待ちくたびれたぜ。もう何回やったかわかんねぇからな」


 男はそう言って気持ちの悪い顔をする。


「っ!?……お前……っ!?」


 気がつけば、後ろに5人ほど人がいた。さすがにここまで来れば相手が何者か分かる。ムスペルヘイム人だ。奴らは湊月がいない間に桜花を襲って犯したのだ。


(クソッ!俺が目を離したからだ……!)


「フッフッフッ……愚かな者よ。この女も殺すと言ったらすぐに体を差し出してきた。死にたくないんだとさ。どうだ?この小娘。この目、そしてこの体。処女だったのがさらに良いな」


 男はそう言って桜花の胸を揉み、お尻を触った。そして、さらに……


「……このゲスが!人の分際で人を犯していい権利は無い!」


 突如シェイドがそう言って怒鳴った。


「あ?何かと思えば、その虫けらは精霊か。なぜお前のようなルーザーが持ってるかは知らんが、そんな虫けらに何が出来る?」


「虫けらじゃない!人ごときに僕を虫けら呼ばわりはさせない!」


 シェイドはそう叫び影を使おうとする。しかし、湊月はそれを止めた。そして、シェイドの頭を撫でて落ち着かせる。


「落ち着け」


「っ!?君は……悔しくないのか!?こんなに言われて……」


「落ち着けよ!」


 湊月は全身から怒りのオーラを醸し出しながら言った。その様子に、シェイドは何も言えなくなる。


「おいおい、やらないのか?じゃあ、この女とお別れだ」


「待て、殺されたくないならその女を渡せ」


「馬鹿なことを言うな。ほれ、小娘。貴様の好きだった人だ」


 そう言って頭をつかみ持ち上げ湊月見せつけてくる。その時、桜花は少しだけ目に光を取り戻した。


 精神崩壊して何も考えられなくなっていた桜花の思考が戻ってくる。すると、桜花は自然と涙を流し初め、一言呟いた。


「ごめ……んね……」


「っ!?」


 その時だった。桜花の左胸にどこから現れたのか分からない剣が突き刺されたのは。そして、なぜかその剣はとんでもないほど伸び自分の左胸にも刺さっていた。


「っ!?カハッ……!」


 突然のことに頭がついていけず混乱する。そして、それ以上に突然左胸……心臓を突き刺されたことで吐血をする。


「っ!?湊月!」


 シェイドが驚きを隠せない様子でこっちを見てきた。しかし、湊月はそんなことは気にせず桜花を見る。


 目に光が無い。完全に事切れている。


「無様な野郎だ。こんなにあっさり死ぬなんてな。その虫けらは連れて行け。誰かにフォースを与えた後始末しろ。その男は俺が殺す」


 ムスペルヘイムの兵士はそう言って近づいてきた。囲まれている。逃げ道は無い。


「クソッ!こうなったら僕が……」


「待て……俺にフォースを渡せ……」


「え?」


「いいから早くしろ!」


 湊月の怒鳴り声にシェイドは慌ててフォースを渡す。湊月はフォースを貰うとふらつく足で立ち上がり、左目を抑えながら男と向き合った。


「なぁ、1ついいか?お前達はそうやって俺達日本人を弄ぶが、俺達に生きる権利はないのか?俺達日本人は平穏に暮らす権利は無いのか?」


「日本人じゃない!ルーザーだ!」


「そんなことはどうでもいい!」


 男は湊月の怒鳴り声に一瞬固まる。しかし、すぐに冷静になると気色の悪い笑みを浮かべ言った。


「あぁそうだ。お前達ルーザーは敗者。全ては俺達にある。権利も、金も、領土もな」


「そうか……フフフ、フハハハハハ!愚かな!全てが自分のモノだと思ってる!地位も名誉も全て!我が物顔で人々を見下している!お前達はな、高みから見下して全てを知っていると思っているようだが、それは間違いだ。何も知らない。外側だけ見つめて知った気になる。それがお前達の敗因だ」


「何が言いたい?死ぬのは貴様だ」


「いいや違う。何も知らないお前達に教えてやろう。フォースというのは、工夫をすれば神をも殺せる」


 湊月はそう言って左目を抑える手を退けた。すると、青白い灯火が揺らめく目が出てきた。


「貴様に教えてやろう。敗者の気持ちとヤラをな。” 我が権限の元に貴様らを処す。死ね”」


 湊月がそう言うと、左目の灯火が強く燃えだした。すると、地面の影が大きくなっていく。そして、その影は鋭い剣となり、その場にいたムスペルヘイムの兵士を全て突き刺し殺した。


 ムスペルヘイムの兵士から赤い鮮血が飛び散る。そして、それらも全て影の中に飲み込まれていく。ムスペルヘイムの兵士はいなくなり、その場に静寂が残った。


「ごめんな、桜花。俺が遅かったから……」


 湊月は桜花に近づきお姫様抱っこで抱き抱え壁に向かって歩き始めた。


「湊月、そっちは壁だよ」


「あぁ、そうだな」


「っ!?その目……!」


「シェイド、お前は俺と一緒に来てくれるか?俺が道を踏み外した時は俺を殺してくれるか?」


「え?あ……うん!約束するよ」


 湊月はその言葉を聞くと、不敵な笑みを浮かべた。そして、壁に影を広げる。ゲートだ。湊月はその中に向かって歩き出した。


「フフフ……フハハハハハ!俺は影の反逆者、シャドウ。世界を壊し作り替える男だ。この世界なんか、ぶっ壊してやるよ」


 そう言って影の中へと入っていった。

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