第6話 本当の影の力

「君は……このロボットに勝てるというのか?」


 リーダーは再び聞いた。


『あぁ。当たり前だ』


「バカバカしい!こんなやつの話なんか聞かなくてもいい!自分達で弱点を探す!」


 レジスタンスの女性がそう言って叫んだ。そして、アサシンブレイカーに向かって銃を構える。


『ほぅ、俺抜きで勝つつもりか?なら、弱点は当然知ってるんだな?どこをどう狙えば簡単に壊せるか、知ってるんだな?』


 湊月がそう聞くと、女性は黙り込む。そして、銃を下ろした。


『どうした?撃たないのか?1人でやるんだろ』


 湊月はおちょくるようにそうやって聞く。それに対し女性は怒りを抑えられないと言った様子で言ってきた。


「じゃあ、あなたがやれば良いでしょ!」


『そうか、ならお前達を囮にしてこっそりアサシンブレイカーを壊すことにするか』


 湊月がそう言うと、その言葉を聞いていた全員が目を丸くした。そして、そんなことを平気で言う湊月に恐怖を覚える。


 しかし、湊月は続けて言った。


『どうした?俺の言うことを聞いて生き延びるか、無視して死ぬか二つに一つだ』


 湊月はそう言って無線から顔を遠ざけレジスタンス達を見た。恐らくこれで堕ちただろう。もう俺の手駒だ。


『頼む……言うことを聞いてやるから教えろ』


 無線からそんな声が聞こえてきた。湊月はそれを聞いて不敵な笑みを浮かべる。


『良いだろう。なら、お前達はまずビルの中へ入れ。そして、1人はアサシンブレイカーを引きつけろ』


「了解した」


 そう言ってレジスタンスは二手に別れた。


 湊月は今の状況を確認した。レジスタンス達はだいたい10人程度、そして、アサシンブレイカーは一機、周りには壊れかけのタワマンがいくつかあり、ちょっとした事で倒壊しそうだ。


 そんなことを考えていると、アサシンブレイカーが銃を放つ音が聞こえた。出てきてから撃つまでの間が長い。反応速度はかなり遅いらしい。


「さて、どうするか……確か、この下には製作途中の地下鉄があったな……フッ」


『1人は地下へ行け。残りは各ビルへと移動し爆弾を設置しろ。設置する場所はなるべくアサシンブレイカーから離れた場所だ』


「了解した」


 湊月は静かに戦況を見極め作戦を送る。恐らくこの状況ならコレが1番最適だろう。


『地下に着いたぞ。どうすれば良い?』


『そこに採掘機があるだろ。それを動かせ』


『これか。わかった』


 無線からガタガタガタという音が聞こえてきた。恐らく採掘機が動き始めたのだろう。この採掘機の速さと距離だとタイムリミットは残り3分ってところだ。


『こっちは準備完了だ』


『こっちもよ』


『こっちも』


 続々と準備が整っていく。そして、ついに全員準備が終わった。タイムリミットは残り2分だ。


「フッ、完璧だ」


『総員その場から退避しろ。距離をとったら俺の合図で爆発させろ』


「了解」


 そう言うと、レジスタンス達はその場から離れだした。タイムリミットは残り1分。だいたいこれくらい離れられれば爆発の被害を受けないだろう。


 それに、アサシンブレイカーも良い位置にいる。囮になったやつは生きているらしいし上手くやってくれたようだ。


「これで、チェックメイトだ」


『やれ』


 湊月がそう言うと、ビルが大爆発した。その爆発でビルが倒壊する。


 どうやらレジスタンス達は上手くやってくれたらしい。アサシンブレイカーから離れた方を爆破したことで、逆にアサシンブレイカーに向かってビルが倒れる。まぁ、アサシンブレイカーはそんなことでは壊れないが、目的はそっちじゃない。


 この下はそもそも地盤が緩い。だから俺一人で地下水を掘ることも出来た。だから、そんな緩い場所にビルが降ってくれば地面は崩れるに決まっている。


「「「っ!?」」」


 アサシンブレイカーは倒壊したビルと共に崩れ落ちた地面の中に埋もれていった。そして、さらにビルの瓦礫がどんどん落ちていきアサシンブレイカーは完全に瓦礫に押しつぶされてしまった。その直後、崩れ落ちた場所から採掘機が出てきた。その採掘機は、アサシンブレイカーが落ちた場所を通る。すると、とんでもない爆発が起こった。どうやら完全にアサシンブレイカーが壊れたらしい。中の漏電遮断器や電圧遮断機が壊され漏電し爆発したようだ。


「フフフ……フハハハハハ!見たか!これが現実だ!フハハハハハ!」


 湊月は爆発した場所を見つめ高笑いをした。


『きゃああああ!』


「っ!?何だ!?」


『おい!何があった!?』


『うわぁぁぁ!な、なんでだ!?アサシンブレイカーがもう一機いるぞ!』


『こっちもよ!』


 無線からアサシンブレイカーが現れたという報告が全部で5つほど聞こえてきた。


(何故だ!?アサシンブレイカーは一機しか出てこないんじゃないのか!?クソッ!異例イレギュラーか!)


 湊月は急いで顔を上げた。やはり、アサシンブレイカーが5機いる。


『おい!どうしたらいいんだ!?殺られちまうよ!』


 無線からそんな声が続々と聞こえてきた。確かに、このままでは全員殺される。幸いなことに、まだ場所がバレていないらしい。


(だがどうする!?爆薬はもう無いはずだ。あれは、たまたまアイツらが持っているのを見つけただけだからな。なら、俺のフォースで倒すか?いや、無理だ。俺もやられる。アイツを壊す武器が足りない。地面をまた……いや、それも壊すものが……クッ!)


『どうしたらいいんだ!?』


 無線からかなり慌てた声が聞こえてきた。だが、もう策が尽きてしまった。


「フフっ、ここまでみたいだね。フォースを返してもらうよ」


 突如そんな声が聞こえた。湊月はふとその声がした方向を向く。すると、そこにはシェイドがいた。


「お前……なんで?」


「大丈夫だよ。彼女には分身が着いてるから。それより、一旦フォースを返してもらうよ」


「あ、あぁ。……フッ、なるほどな」


 湊月はそれで察した。だから、無線を使って全員に呼びかける。


『お前達、そのまま見つからないようになるべく地面に伏せろ。今から使う爆弾は少し特殊でな、見れば目が焼き尽くされ見えなくなる。決して上を見るな』


『え?わ、わかった』


 無線の中から疑問に満ちた声が聞こえる。しかし、それでも言われた通りに見つからないように地面に伏せた。


「良いよ」


「よし。湊月、僕の力を見ててよ。”我が権限の元に貴様らを処す。病みに飲まれろ”」


 シェイドはそう言って右手を前に突き出した。すると、右手の手のひらに黒い球体が形成される。


 その黒い球体は、先程アサシンブレイカーが落ちたところより少し上のところで浮かんで止まった。


「……一体……?」


 湊月が不思議に思っていると、その影は突如大きくなりアサシンブレイカーの膝の部分から上を飲み込んだ。そして、その場にいたアサシンブレイカーは全て消された。

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