第5話 暗い過去
湊月の一言で、周りの影が蠢き出した。その影は、まるで泥沼のように男にまとわりつき飲み込んでいく。
男は最初は抵抗したが、影が強すぎて諦めてしまった。そして、静かに飲み込まれていった。
「……フッ、力には代償がある。俺はこれまで代償を支払い力を使えなかった。だが、今は違う。……なぁ、見たか?これが諦めなかった俺の力だ」
そう言って桜花を見つめた。どうやら今の攻撃を見てシェイドの存在を認識し始めたみたいで、見えるようになったらしい。
俺の肩を指さしてガクガク震えている。湊月はそんな桜花を見て少し笑うと近づいた。
「そんな怯えるな。俺とお前は仲間だ」
そう言って頭を撫でた。そして、静かにその場を離れる。
(さて、これからどうするか……フフッ、もうあの女は堕ちた。次は
「なぁ、シェイドはフォースを使えるのか?」
「僕?基本的にフォースの源は皆使えるよ。ただし、湊月にあげた分弱くなってるけどね」
その言葉に少し頷くと、湊月は少し悩む仕草を見せた。やはり、桜花はシェイドに任せて俺一人で動くべきだ。たとえ弱っていると言っても人1人守れない程じゃないだろう。
「シェイド、お前 は今どれ位弱っている?」
その問いに、シェイドは少し悩むような仕草を見せた。そして、湊月を見つめ少し笑った。どうやら湊月の魂胆がわかったらしい。
「湊月と同じくらいの強さだよ」
シェイドはそう言って笑った。どうやら湊月と同じらしい。だとしたら、桜花はシェイドに任せても大丈夫そうだな。
「湊月はどうするの?」
「俺は……
「え!?そ、そんなことをして大丈夫なのですか!?」
桜花は少し怖がりながら聞いてきた。どうやらまだ湊月に対する恐怖心が抜けてないらしい。
まぁいい。その方が駒としては使いやすい。このまま俺の駒として働いてもらう。
「乗っ取るって言っても、ちょっと協力してもらうだけさ」
(そう、俺の部下としてな。駒がたった1つじゃ勝てない。勝つためには軍が必要だ)
そう心の中で思って不敵な笑みを浮かべた。そして、静かにフォースを使い、体中に影をまとわりつかせていく。
その影は、湊月にまとわりつくと服のような形になり、顔のところには目から上を隠すような仮面が作られた。
「俺の目的のために手伝ってもらう。そのためには、俺は星影湊月としてではなく、”シャドウナイト”という名で呼んでもらう」
「シャドウ……ナイト……?」
「あぁ、本名を使えばバレる可能性があるからな」
そんなことを言って側溝の空が見えるところまで歩く。
「じゃあ行ってくるよ。……シェイド」
そう言って湊月は出ていこうとした。その時、桜花が何かを言っているのに気がついた。
「どうした?」
「いや、その、なんでレジスタンスがいるのがわかったのかなって思いまして……」
「……お前達が知ってるかは分からんが、”地上戦起動型自動殲滅兵器……アサシンブレイカー”が出てきた。アイツが出てくるということは、恐らく反抗するものが現れたんだ」
そう、アサシンブレイカーは基本的に虐殺には使用されない。なんせ、あれ1つ動かすだけでかなりの金が動くからな。それ故に、敵対する勢力が現れた場合にのみ、使用されることになっている。
「……なんでそんなこと知ってるんですか?」
桜花は少し警戒しながら聞いてきた。当然の質問だ。来ることはわかっていた。でも、その言葉を……質問をして欲しくなかった。
「……殺されたからだよ」
「え?」
「妹を……殺されたからだよ。……この際だから話してあげる。俺の家族は4人居た。両親と最愛の妹がいた。俺は妹とは3つ離れていた。俺が中3の頃事件は起こった。妹のクラスの男の子がムスペルヘイム人の貴族の子の鉛筆を落としたらしい。それに激怒したムスペルヘイム人はその子をその場で公開処刑した。そして、あろうことかその学校の日本人を皆殺しにするとほざきやがったんだ。当然その事に反発した日本人がレジスタンスとして立ち上がった。そして、あいつは出てきた」
そう言って顔を俯かせる。さすがにこんな回答が帰ってくるとは思っていなかったのだろう。桜花は顔を俯かせる気まずそうな表情を見せる。それに、湊月自身もかなり辛い。
「……俺はあの日、学校を抜け出して妹の学校まですぐに向かったよ。なんせ、授業でたまたまテレビをつけた瞬間に写ったからな。そして俺は、その兵器をまじかで見た。体型はシュッとしてて、全長はざっと30メートル、足の裏にはランドスピナー、バックパックには
湊月のまるで悲鳴のような話はその場の雰囲気を真っ黒にしてしまった。桜花はその話を聞いて、なにか込み上げてくるものがあるとわかった。
「……ごめんなさい……安易に聞いた私が馬鹿でした……」
そう言って謝る。湊月はすぐに笑顔を作ると影の仮面をかぶり、影のマントを被った。
「そこで待ってろ」
そう言って湊月は側溝から出ていった。その場に残ったのは、暗い空気と、静寂だけだった。
━━一方湊月は、既にレジスタンスを見つけていた。どうやらかなりいるみたいだ。だが、状況がまずい。既に絶体絶命だ。
(まずいな。アサシンブレイカーにここまで追い込まれているとは……早急に策を練らねばならない。だが。どうする?アサシンブレイカーに影が通用するかが分からない以上、影を使うのは効果的じゃない)
「……ん?ちょっと待て……この下は確か……」
「お前!何者だ!?……そうか、お前ルーザーだな!顔を隠しても……」
「”死ね”」
湊月は背後に来たムスペルヘイム人を一瞬で殺した。
「ん?無線か……フッ、確か、変数さえいじれば……」
ピピッ……
「簡単だな。傍受されてる可能性もあるが、まぁいいだろう。問題は無い」
湊月はそう言って無線を繋げた。
ピピッ……
「ん?なんだ?誰か無線を使ったのか?」
レジスタンスのトップらしき人物は部下にそう聞いた。しかし、全員首を横に振る。
「じゃあ一体……」
『お前達、なぜこんなところで諦めている?』
「「「っ!?」」」
その場の誰もが謎の人物からの声に驚いた。
「諦める?バカを言うな。俺達はまだ……」
『諦めていないか?じゃあなぜそこで何もせず死を待っている?なぜ今すぐ策を練り行動に移さない?』
「それは……」
湊月の言葉に全員黙り込んでしまった。それでも湊月は続ける。
『お前達は口では諦めてないと言っているが、心の中では諦めているのだろ。愚かな』
「言わせておけば……じゃあ、君はあのロボットをどうにかできるというのか!?」
『出来るさ。お前達が俺の言うことを聞くのならな』
その言葉は、その場の全員を驚愕させた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます