第31話 スタンピート

 ダンジョンが合計6個に増えた夜、閣僚が集まって会合を開いていた。


「どうする。今の自衛隊じゃ対処しきれないぞ!」


「それは分かってる。だが、どうすれば・・・・・・」


「・・・・・・警察を投入するしか無いだろう」


「いきなり警察の投入じゃ治安悪化の懸念が大きすぎる」


「では如何しろと?」


「せめて機動部隊の投入にして様子を見るのはどうか?」


「それでも人員は足りないぞ」


「最終的には民間人の投入も視野に入れておかなければいけないかもしれないな」


「・・・・・・そんな事態にならない事を祈ろう」


 俺はネットニュースを読んでいた所、気になる記事を見つけた。


――へぇ、機動隊の投入が決まったんだってさ。


『自衛隊の対処出来る範囲を超えたんでしょうね」


――海外で銃火器が効かない魔物がいるって情報があったのに銃火器にこだわっていたからこんな事になってるんじゃ無い?


『それはあるかもしれないわね』


――うわ!京都に現れたダンジョンの扉のホテルのオーナーが国に対して土地の返還か1500億円での購入かを迫る裁判を始めたみたいだぞ!


『いつかはそう言うの出るかと思ってたけど予想よりも遙かに早いわね』


――まぁ、ある意味ありがたいと言えばありがたいが大丈夫なのか、これ?


『さあ?それよりそろそろ出かけないと大学に送れるわよ』


――あ!ありがとう。アカシャ。


 俺はネットニュースを見るのを止めて大学に行く準備を終わらして大学に行った。


 大学では機動隊の投入の話で持ちきりだった。


 なんでも俺と同じように自衛隊の処理能力を超えたんじゃ無いかという声が多かった。


 それと同じくらい機動隊で大丈夫かという不安の声も大きかった。


 鉄工所に以前に連絡して新しい特許を取った金属の生産状況を聞く。今の所は順調らしい。


 刃物メーカーに新しい金属を使ったナイフはどうかと聞くと順調に製作出来ていて切れ味や耐久性も前よりも何段階も上がっていて軽いそうだ。


 最初のロットは米国軍に採用され、納品されるようだ。


 比較映像として前までのナイフを新しいナイフで切断する所を動画に撮ってウーチューブに流してPRしたらとんでもなくバズった。


 動画の中で今現在、一般販売はしておりません。写っているナイフを操っている人は達人です。各国の軍隊用のPR動画です。と英語・日本語・ドイツ語・ヒンディー語・中国語の文字で記載したのに問い合わせが殺到しているらしい。


 正直、済まんかったと思ってる。


 国会の討論では3ヶ月後に倍の4個ダンジョンが出来たのなら、また3ヶ月後には倍の8個出来るのでは無いかと言った討論がなされている。


 そして、賠償を求められるくらいなら民間人を活用すべきだという声やある程度の運動の能力と人格面に問題が無いのならそれもありでは無いかと言う声も上がり始めた。


 この頃からダンジョンの負の側面だけで無く、利点・・・・・・ダイエットになったり全体的に若返ったり、肉体の強度が上がったり、魔法が使えると言った点を報道し始めた。勿論、迷宮から産出されたとされる宝石類も出されてオークションで高額で落札され噂になった。


 それらの報道に乗せられた人は段々と数が多くなってきていた。その対価が自分の命かもしれないのに・・・・・・。


 それから1ヶ月が経って京都のダンジョンの扉が現れたホテルのオーナーの判決が下された。


 ”現時点で非常事態宣言も出されておらず、また強制執行しておらず、何ら金額の保証もしていない為、原告の勝訴とする。


 だが、土地の価値は1500億円もしない物と判断せざる得ない為、購入の場合は両者との話し合いで決着を付ける事とする。”と言う判決が下された。


 この判決が下されてから1週間後にダンジョンを18歳以上の日本国籍を持つ民間人に許可制で開放する案が国会で通り、新しく現れたダンジョンの扉がある土地の持ち主が基本的に対処する事。


 出来ない場合は無償で日本政府に譲渡する事等やダンジョンの入り口を民間に販売する事も提案され国会で通り、即日施行された。


 許可を持っている者を探索者と喚ぶ事とするという事。ただし、ダンジョンの中は管理者を名乗る者が言ったように無法地帯で日本の法律や憲法が及ばない点、及びを肝に銘じておくこと等が注意点として読み上げられた。


 また、銃刀法が緩和されて探索者になった者は審査の上で剣や刀に槍といった刃物を持ち込める様になったが、管理義務も一緒に付いてきた。


 また、その事に伴い日本刀等の製造の緩和もされて、普通の刃物メーカーでも作れる事になった。3日間で第一次の募集が締め切られ抽選に受かった者がその4日後からという点がおかしな所だった。


 俺も一応申し込みし、希望試験日を第一志望が土曜日、第2志望が日曜日と書いた。


 刃物メーカーでは刀や剣といったものがメインの売り物になっていた。


 ダンジョン近くの土地は大幅に下がったと思ったら探索者の雰囲気のお陰で上がったりしていてジェットコースターの様だった。


 あっという間に抽選が終わり、ほとんどの人が抽選に受かった様だ。


 落ちた人は前科者や暴力組織に何らかの関係がある人達だった。


 探索者の試験日になり、試験を受ける事になった。


 マラソンや運動テストの様な事をして、性格診断テストの様なものを受け試験は終わった。


 2週間後に合格の書類が送られてきて使用する刃物の登録は千本桜と夜桜と宵桜を登録した。


 現れた4つのダンジョンの中に東京駅の近くのホテルがあった。


 週末、そこに行きダンジョンに潜った。最初のダンジョンでの攻略は10階層に留めた。


 そして、小部屋やドロップしたと言ってダンジョン産の宝石をオークションにかけてみた。


 十数個出した結果、十数億円になった。これはダンジョンドリームと呼ばれ皆の欲望に火を付けた。


 そして、何度目かのダンジョン探索で見つけたと言って召喚獣の5人を召喚した状態でダンジョンから出た。勿論、顔や体型の変装はしている。


 当然、大騒ぎになったが、鑑定のスキルを持っている職員が他は見えないが"七市伸幸ななしのぶゆきの召喚獣"と書いてあるのを見たと小声で言って人間じゃないかと言う議論に終止符を打った。


 週末しかダンジョンに潜ってないのでスタンピードの針は進んでいる。


 此処で国家絡みでダンジョンの扉を爆破しようとしたあの国で遂にスタンピードが始まった。


 辺り一面のモンスターの数にそれを攻撃する軍隊。ミサイルを使用して抵抗をするが、ミサイルが聞かない魔物もいてすり潰されていく。


 次第に押され始める軍隊。民間人は避難をしている。


 徐々に撤退していく軍隊に食べられる軍人達、TVレポーターも退避をする。


 そこからは現地にある設置されたカメラの映像や警備カメラの映像が映し出されていた。


 丸一日も持たずに壊滅した軍隊に市街地へと侵入する魔物達、食べられる民間人の子供。ドラゴンに破壊されるビルや建物達。


 こういった映像が1週間スタンピートが続き、それが放送されて急に魔物達が苦しみだして死んだ。結局、5万人以上の死者とそれ以上の負傷者を抱えてしまった国が残った。


 ダンジョンからは未だ嫌われている中で、後々、民間人はダンジョンの中に入れる事が判明した時には既に遅かった。


 国から逃げて難民になる人が多数出たが、他の国にもダンジョンがあると分かると無い国に移送するよう難民が要請したが受け入れる国は無かった。


 これらを見た日本の民間人はダンジョンの危険性に改めて気付かされて、ダンジョンのある地域の土地の値が殆どただ同然の値に下がったが買い手は現れなかった。


 勿論、ダンジョンの扉の値も土地建物付きで0円で売られたが誰も購入者はいなかった。ダンジョンで取れた物品及び成果物は税を60年間全ての税を入れて10%とする。


 また、ダンジョン周辺3kmの土地建物の固定資産税をダンジョンが有る限り無税とする。この2法案は以後60年間に変更する事を禁ずる。破った場合にはその時の国会議員は無期懲役で仮釈放も早期釈放も無し、及び全財産没収するという国会議員に非常に厳しい法案が通ったにもかかわらずにだ。


 ちなみに裁判になった難波の土地は返却をし、責任をホテルのオーナーに押しつけようとした。


 だがホテルのオーナーが譲渡するという作戦に打って出た為、押しつけられなかった模様。





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