第21話 刃物メーカー買収
12月に入り学校は受験シーズンまっただ中という中で、俺はアカシャにある提案を受けていた。
『岐阜にある刃物メーカーを買収しない?丁度良い所があるの。このままだと今月で倒産してしまうけど倒産させるには惜しい会社が!」
――それってダンジョンが出来た後で武器を作らせようって事?
『勿論それもあるわ!でも、技術があるのに世界展開してないから日本だけで先細りになっているのよ。世界に羽ばたいたら軌道に乗るはずよ!』
――でも1箇所だけ買収しても生産力が無いんじゃない?
『誰が1箇所だけって言ったの?メイン以外にも技術を持ってる会社で応じてくれそうな100%株式持っていける所の会社は皆回るわよ』
――・・・・・・ハードな出張になりそうだね。
『弁護士の
――わかったよ。
『じゃあ頼むわね』
――了解。それにしても受験生なのにこんな事していて良いのかな?
『良いのよ。私が許す!』
あ! そういやもうすぐクリスマスだケンタッ○ーでパーティバー○ルを2個、予約しておかないと! 電話しようっと。
岐阜に行き、刃物メーカーを巡る日々が始まった。
ちなみに学校ではどっぺる君が活躍中である。
まずはアポを取ったメインのターゲットである今月にも倒産するという会社に行く。
「すみません。アポを取りました七市と弁護士の加藤と言いますが、社長はいらっしゃいますか?」
「社長~!お客さんだ!」
「応接室にお通ししろ!」
「社長が来ますので一先ず応接室でお待ち下さい。応接室は此方です」
「ありがとうございます」
そう言って、応接室に案内される俺達。
暫く、立って待っていると社長という80代のお爺さんが連れてこられた。
「初めまして、
「これはどうも、此方はこう言う者です」
と、名刺を差し出してくる。受け取り、名前と役職を確認すると社長で間違いなかった。
「今回お邪魔させて頂いたのは、この会社を買い取らせてくれませんかと言うお願いに来ました」
「この会社の買収だと?」
「そうなります」
「1株幾らだ?」
「それは経営状況を見ての判断になります。此方でも一応調べさせて頂きましたが、それ以外の物があると話が違ってきますので」
「一株十万以下じゃ売らねぇ」
「それは暴利という物です。此方が調べた限りでは借金が6000万円ありますよね。それにこの工場も自宅の土地建物も担保に入っているとか。それらを考えると借金を引き受けるかわりに株式全株で1万円と此方は試算していましたが?それに社員の雇用も守られますし」
「それは此方の勝手だ!とにかく1株10万じゃ無いと売らん!」
「それでは、この話は決裂という事になりますね。お邪魔しました」
そう言った時にしまったという顔をしたがもう遅い。俺達は工場から出て次のアポを取った先に行く事にした。
次のアポ先は技術力はあるが海外展開しようとした先に資金繰りが悪化して困っている所だ。
「すみません。アポを取りました七市と弁護士の加藤と言いますが、社長はいらっしゃいますか?」
「応接室にご案内しますのでそちらでお待ち下さい」
そうして応接室に通される俺達。
少しして60代ぐらいの男性が来た。
「初めまして、
「これはどうも、私はここの社長を務めておりますこう言う者」
と、またも名刺を差し出された。
社長に間違いは無いみたいなので話を進める。
「今回お邪魔したのは此方の技術力の高さについて驚き、買収させて頂けないかと思いアポを取らせて頂きました」
「こちらのどのような技術に驚かれたのですか?」
「切れ味の良さと剛性です。岐阜には他のメーカーもありますがその内のトップ勢に入ると思っています」
「そこまで言われると照れますね。それで買収でしたっけ。詳細はどのように考えておりますか?」
「此方が調べた限りですと岐○銀行に3千万円の借金があり此方の工場も抵当に入っているとお聞きしています。そこで借金を此方が持つかわりに全株式を1千万円で買収させていただけ無いかと思います」
「ほう。思ったよりも高く評価して頂いているようですね。良いでしょう。その条件で買収に応じます。全株式は私が持っているので問題は無いでしょう」
「社長も従業員として技術指導に当たって頂く事が条件ですよ?」
「これは1本取られました。分かりました。お引き受けしましょう」
「それでは、書類を一式持って参りましたのでご記入と実印の押し印をお願いします」
書類の記入、押し印が終わり買収は成功した。
社長にここの会社の技術力が凄いので欲しいという会社は無いか聞いてみよう。
「社長、刃物メーカーの目から見てここの技術が凄いから欲しいという会社や海外に強い会社等は同業者で知りませんか?」
「そうですね~。技術力で言えば○塚さんのとか、海外に強いのは○亀さんの所ですね。2件共に負債を抱えていて今は苦しい時期だったはずです。よろしければ私からアポを取りましょうか?」
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂きます」
「それでは、今からアポを取りまので少々お待ち下さい」
暫く待つと社長からアポが取れたとの連絡があり、2件とも今日であった。
急いでアポに間に合うよう暇乞いをしてタクシーに乗り行く。
住所はプリントアウトされたのを渡されているので大丈夫だろう。
アカシャに言われた会社について聞く。
『そこの会社2つね。技術や海外拠点は良いのだけれど、負債が少額で正直買収出来るかどうか分からなかったから候補から外していたけど、資金繰りに悪化してるなんて初めて聞いたわよ。
ちょっと待ってね
・・・・・・あれ?極小の確率だった資金繰りの悪化が1社は一昨日、もう1社は
――アカシャ、ありがとう。
アポを取って貰った時間に間に合って○塚(株)には間に合った。早速社長に会う。
「初めまして「ああ!あそこの社長さんから名前は聞いてるから自己紹介入らないよ。とりあえず名刺交換しようか?」」
と言う事で俺と加藤さんで○塚の社長さんと名刺交換した。
「何でも買収したいんだって?うちは高いよ?」
「社員の雇用と比較しても高いですか?」
「え?何のこと?」
「待ってる間に調べさせて頂きましたが、一昨日に6千万円の負債が発生して明後日の手形が不渡りになりそうだとお聞きしましたが?」
「なんで知ってるの!」
「調べましたので」
「早すぎる!」
「早さがモットーな物でして!それで、此方の提案としては負債を負うかわりに全株式の無償譲渡、そのかわり今の社員はよほど酷い社員で無い限り首は切らない方針か負債を負うのは変わりありませんが全株式を1万円で購入するかわりに首にするしないは此方の自由かのどちらかなんですが?」
「お手上げ!その2択なら無償譲渡を選ぶしか方法は無いじゃないですか!」
「いえ、此方の提案を断るという選択肢もあります」
「そんな事出来ないのを知っていて・・・・・・分かりました。○塚の株式100%私が持ってますのでそれを無償で譲るかわりに先程の条件で成立をお願いします」
「それでは、ここに会社の譲渡契約一式ありますので記入と押し印をお願い致します」
「分かりました」
最後の○亀も同じ条件を突きつけたら無償譲渡で行く事になった。
書類を書いて押し印して後は加藤さんにお任せだ。
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