第2話 難易度調整ダンジョン

 バイトを終えて帰宅した伸幸は改めてダンジョンのモニターになった事を思い出す。


 気は進まないが、ネットで剣鉈を探して2万円くらいのを購入する。


 防具はバイク用のプロテクターで上下合わせて一万五千円位のを選んだ。


 ついでに荷物を入れる山岳用のリュックサックも購入した。


 明日には届くらしい。学校が休校になってくれて良かったと思った。


 広い家の中には伸幸しかいない。


 2年前に両親が交通事故で大手の運送会社と正面衝突したからだ。


 相手の居眠りが原因だった。


 大手の運送会社だけあって、慰謝料は2人死んでいるので税抜きで2億円を超えた。これに両親が入っていた生命保険の保険金が税抜きで五千万円ほど入ってきた。


 その代わり伸幸は親戚も祖父母もいなかったので一人になった。


 弁護士が未成年後見人になってくれた。


 それも後数日で18歳の成人になるので、未成年後見人は終了する。


 だから荷物を受け取るのも自分でしなければならない。


 それが少し寂しく感じた。


 アカシャがパソコンでプログラミングをしろと言ってきた。


 何でも自動でファイアーウォールやウイルスの発見・検出・駆除・解析・ワクチンの開発・ハッキングされた際の対策(逆ハッキング含む)と売買する株・FX・仮想通貨・土地・建物にも対応した自己進化するAIで金儲けをするらしい。


 何故かと聞けば、これからダンジョンが出てくればそのダンジョンを自分の物にする為に起業して土地の買い占めを計るらしい。


 金がある事は良い事なので言われたとおり高校入学の祝いで買って貰った当時は最先端だが今はもう型落ちのノートパソコンを立ち上げてソースプログラムを書いていく。


 脳内にどの言語を使ってどんなソースプログラムを書くのか浮かんでいるのでその通りに書くだけだ。


 夕食とトイレ以外は今日はこれに残り時間の全てを費やした。



 翌日、早朝からいつもの様に朝刊を配るバイトをしていた。


 ここで働いて2年になるが、最初の方にバイクの免許取ったら原付に乗って配って貰うよと言われたので頑張って取ってみたら、最初の内は原付に乗せて貰えたが太りだしてから自転車漕いで痩せろと言われて自転車での配達になっている。ちなみに高校入学当初55kgだった体重は96kgまで上がっている。


 そう、豚である!


 体重管理の甘さと家族が居なくなったストレスで激太りした結果である!


 朝の新聞配達のバイトが終わると家に帰って着替えて学校に行く所だが、今日と明日も学校は休みである。


 次のバイトの時間までプログラミングをしておこうと行動した。


 昼頃に荷物が届いたので着替えてみるとバイクのプロテクターは少しキツかったが何とか普通に動けるので良しとした。


 剣鉈を腰に差しているとアカシャが話しかけてきた。


『ねぇ、ダンジョン行くんでしょ!』


「ああ」


『ダンジョン行くのに水筒とか持って行かないと喉渇くわよ』


「あ! そうだな。ありがとう」


 俺は1Lの水筒に水を入れて持って行く事にした。


 忘れ物はないかと思い見渡したが特段とくだん、思い付く物がなかったので鍵を初めて出して見た。


 見てみると鍵は俺が持つと幾何学模様の青い光が走り、少しかっこよかった。


 鍵を見てダンジョンに行きたいと念じると、次の瞬間にはダンジョンに着いていた。


 と言っても、俺の家にそっくりな場所で照明も点きトイレやシャワーもあった。唯一違うのは玄関の棚に丸い水晶の様な発光体と床に魔法陣がある事だった。一応、念の為に触ってみたが何も無かった。


 不思議に思って玄関から外に出ると、そこには洞窟の中だった。


 どうやら俺の家に見える場所は安全地帯セーフティーゾーンの様だ。


 ここからが本番という訳だ。


 どうやら洞窟の中はほの暗く光っている。どうやらこれがヒカリゴケの一種という物らしい。先は10mまでなら何とか見える範囲だ。


 おれはスニーカーで音を立てずに移動する。勿論、手帳サイズのノートにマッピングを忘れていない。暫くしばらく行くと左右の道とこのままの直線の十字路じゅうじろの道に出た。


 左手の法則に従って左に行く。すると暫くしてからずるずろと引きずる様な音が聞こえてきた。


 目をこらして見てみると不定形のアメーバーの様な生き物がいた。


 たぶん、スライムだろうなと見当を付けて戦闘に入る。


 スライムがバッと全身を広げて襲いかかってきた。


 俺はバックステップしてそれを避ける。


 そして空中にいるスライムに向かって剣鉈を振るう!


 ジュッという音がして剣鉈が溶けるのを見た。


 ヤバい!勝てない!俺は逃げようとしたが一歩遅かった。


 スライムが酸を吐き出して俺はもろにそれをかぶった。


 一瞬で肉が溶けて焼けていく様な痛みが全身を走る。


 藻掻もがいている間にスライムが来て俺の全身を包み込んで溶かした。


 溶かされる最後まで意識が保てなかった事が救いだ。


 気がつけば安全地帯セーフティーゾーンの俺の家に戻っていた。剣鉈も防具のバイクのプロテクターも無事だ。


 だけど、あの溶かされる感覚は忘れられない。


 早速、俺は家の中で文句を言う。


「あんな化け物出会ったら終わりじゃないか! これじゃ、難易度調整以前にスタンピードで全滅するぞ!」


おれがそう言うと、返答が帰って来た。返答が帰ってくるとは思わずにびっくりした。


「ごめんごめん、でもあれが最弱種なんだよ。あれ以下となると新しく作るしかなくなってしまう」


「じゃぁ、そうしてくれ。何しろ刃物が効かず、相手の酸の攻撃は被ったら一瞬で終わりって酷すぎるよ。攻略方法が見当たらない! 最初はゲームの様な丸いスライムで攻撃は酸じゃなくて体当たりとかにしてくれ。それと、酸はもっとずっと弱くしてくれ! 具体的に言うと、洗浄剤より少し強いぐらいに!」


「分かった! その方向で考えよう。これじゃ全てのモンスターを新規で作り直した方が良さそうだな」


「そうだな。そうしてくれると助かる」


「そういや、話は変わるけど安全地帯セーフティーゾーンなんだよな、ここって」


「そうだよ」


「電気とか水とか使えるの?」


「一応、使える様に設定はしたよ。君しかこのダンジョンは使わないんだから」


「ありがとう! これでプログラミングがはかどるかもしれない!」


「どう致しまして? それじゃ、1回作り直すからダンジョンから出て行って」


「わかった」


 俺は喜んで了承してダンジョンから出たいと鍵に向かって願った。


 ダンジョンから出てみると1秒も時間は経っていなかった。


 そして、出て1秒後に”改修終わったよ”と脳内に管理人の声がした。


『ねぇ、ステータス見た?』


「いや、未だ見てない」


『見てみたら耐酸性Lv3ってあるよ』


「うそ!」


 俺は慌ててステータスを見ると確かにスキルに耐酸性Lv3とあった。



 俺は今度はノートパソコン類を持ってダンジョンに行くと今度はノートパソコンの電源をコンセントに繋いでから、安全地帯セーフティーゾーンの入り口からダンジョンに入る。


 手帳型のノートに書いてあった十字路じゅうじろに来ると前回通り左手の法則で左に進む。そうすると今度は丸いスライムがいた。


 俺に気がつくと、体全体を弾ませてぶつかってきた。俺は一度は受けてみないと攻撃がどの程度か分からんと思い受けてみると、ボクシングヘビー級のパンチの様な破壊力がプロテクター越しでもあった。


 思わず蹲りうずくまりそうになったが相手のスライムが追撃をしようとしているのを見て痛いのを我慢して一時撤退した。


 体から痛みがなくなりちゃんと動ける様になると、再度挑戦した。


 今度はスライムの攻撃は避け、相手に剣鉈で切る。


 抵抗はなく切れていく、そうしてスライムが切った箇所はそのまま本体から切り離されて本体は小さくなった。


 本体が小さくなると動きが素早くなった!


 こう言うのって本体の核が弱点なんだよなと思い、避けた所で隙を見て観察すると半透明の本体の中にゴルフボール位の小さな核があった。


 そこを今度は狙ってみると、運良く核に剣鉈が当たりスライムは消えていった。


 消えた場所を見ると小さなクリスタルがあったのでポケットに入れておいた。

 先に進むと小部屋が左手にあったので罠を警戒して足で扉を開くと素早く横の壁に隠れる。罠は何もなかったが中には緑色の醜悪な小人が3人居た。小人はた

ぶんゴブリンだろう。


マップを仕舞う間に相手は呆然とした状態から立ち直り、此方にナイフを向けてきた。


 此方も剣鉈を抜き、応戦しようとするもゴブリンのナイフが迫ってきて慌てて逃げる。


 剣鉈で攻撃してきたゴブリンを迎撃するが逃げられた。


 太ももに熱さが走る。見るとゴブリンが醜悪な笑みを浮かべて俺の太ももにナイフを突き立てていた。


 俺はそのゴブリンの頭に向かって剣鉈を振るうとゴブリンは避けきれず脳天に剣鉈を受けて死亡した。


 残り2匹のゴブリンは一瞬ひるんだ。その機を逃さずにもう1匹を殺そうと剣鉈を振るおうとして、殺したゴブリンの頭蓋骨に挟まって抜けなくなっているのに気がついた。


 無理矢理引き抜く頃には相手は立ち直り、再度此方に向かって殺そうとナイフを振ってくる。


 相手の攻撃を剣鉈で受けてナイフを弾き飛ばすとゴブリン2匹目を今度は胴体に剣鉈をさして殺した。


 最後のゴブリンはそれを見て逃げようとした所を背後から首をはねて殺した。


 それで片が付いたが、刺された足の太ももの傷の手当てもせずに動き回った所為せいで目の前が暗くなってきた。


 ヤバいと思い、せめて倒したゴブリンのドロップ品でも持って帰ろうとゴブリンの死体があった場所にあるクリスタルとナイフを三つ回収した所で意識を失った。




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