第3話 初仕事

「ふぁー。」

(あれ?ここって…そうだ。私この国の城で働き始めたんだった。)

眩しい朝日に照らされていつもよりも早い時間に起きた。

(サナはまだ寝てるかな?)

この部屋のもう1人の住人。私と同じメイドであり先輩のサナのことが気になり、ベッドを覗く。

「え?いない。」

ベッドの中にサナの姿は無かった。

「リビングにも!トイレにも!いない!」

サナのことを心配しながら、初仕事に遅れるわけにもいかず、身支度を整え、集合場所に向かった。

(サナ…大丈夫かなぁ)

集合場所に着きマリ姉を探す。

「あっ…いた!あれ?奥にもう1人いるなぁ。」

まだ集合時間の十分も前だというのにもう仕事をしている人がいた。目を凝らす。迅速な動きでめちゃめちゃな広さの城を綺麗にしていく。

(あれは…嘘?!サナ!?)

私が昨日見たのとは全く違う雰囲気のサナを見て唖然としていると声をかけられた。

「おはよう!昨日はよく眠れたかしら?」

「あっマリ姉!はい、ベッドふかふかでよく寝れました。」

(本当はちょっと楽しみであまり眠れなかったんだけど…)

「うん、良かった。じゃあ早速だけど、今日はあそこにいるサナちゃんって子についていって。優しい子だから色々と教えてくれるわよ」

「知ってます!部屋が同じだったので…すごい良くしてくれました!おっとりしてる子だと思ってたんですけど、働いていると雰囲気変わりますね。」

(本当に、別人みたい。なんかかっこいいなぁ)

「ああ、サナとお部屋一緒だったのね!凄いでしょ。あの子ああ見えて、副メイド長なのよ」

マリ姉はそう自慢げに話すと混乱している私を置いて仕事に戻った。

「あれ?副メイド長?メイドって何だっケ?」

「どうしたの?リリー。目回ってるよ?」

10人は余裕で暮らせそうな広さの部屋三つの掃除を終えたサナが涼しげな顔をして話しかけて来た。

「あっサナ!サッキマリネエカラキイタンダケドフクメイドチョウナンダッテ?ん?…副…メイド長?!…ぶくく」

今さっき働き始めた脳みそが理解したサナが副メイド長だと言う事実に耐えきれず壊れてしまった。

「あはは、リリー驚きすぎだよぉ」

喋るとやっぱりいつものサナだ。いつもって言っても会ってまだ一日しか経ってないけど。でもさぁ、びっくりするじゃん?失礼かもしれないけどさぁ、

「まぁ、そんなとこで詳しい仕事の説明しようかな」

そうだ。忘れてた。人生初の仕事だ。しかも王宮メイド。頑張らなくちゃ。

「はい!」

力いっぱい返事をするとサナは頷いて説明をしてくれた。

「私達の仕事は色々あるんだけど特にこの3つ。一つは王宮の掃除。もう一つは帝王、ギルバード様の身の周りの世話。食事とかお茶とか買い物とか!食事とかお菓子とかは作られたもの出すだけだけど。最後はリリーが雇われた理由でもある仕事だよ。簡単に言えばギルバード様の家庭教師。ギルバード様は下町育ち、貴族に必要な教養が全くない。そこでリリー。なぜか孤児院育ちなのにめちゃくちゃ教養がある。多分リリーが自分で思ってるよりもいい成績。しかもその教養は貴族に向いてる感じのやつ。んー。例えばダンスとか歩き方とか?リリー幼少期の頃の記憶がないって言ってたでしょ。もしかすると貴方貴族だったのかもね。…はぁ、ま、こんな感じだよ。聞くより慣れろってね。」

その後はサナに続きながら掃除をずっとしていた。なぜなら、今ギルバード様は出張でサナが言っていた仕事の内二つはできないからだ。


あっという間に夜になり床につく。

(今日の歓迎会嬉しかったなぁ。こんなに楽しいだなんて。本で知ってるギルバードは王族を倒したとか仲間の使用人も断罪したとか少し怖いイメージだけど、こんなにいい人が王宮集まってるんだ。帝王もいい人なのかもなぁ。)

次の日もその次の日も同じようにサナについていきながら仕事を覚えていた。最近になってやっと1人でも仕事を任せてもらえるようになって来ていた。気づけばもう一ヶ月も過ぎていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る