第23話



 マルセリーノは今夜も社長室で寝泊まりをしている。

と言っても目覚まし型のタイムマシーンの中でだ。

中からは、マルセリーノの声とタッタリアの声が聞こえている。


「で、首尾は?」


 二人は無線機で話をしている。


「はい、プレゼントしたショートケーキ、そしてアイスコーヒーの中に部分的記憶消去薬を入れておきました」


「うん、お前のことやから間違いはない、とは思うねんけど、ワイのことだけを忘れるようにしてくれたやろうな?」


「はい、薬が効き始めた頃に遠隔操作装置で、その部分だけを狙って消去しました」


「なんか、この国のスパイ映画みたいなことしてしもうたな」


「はい、仕方がありません。私たちの星のことを調べ始めたと同じですから」


「うん、まぁ、そこだけしか切り取られてへんしな。せやけど地球人って他人のこと探るん好きやな、もしかして日本人だけか?」


「統括教授」


「何?」


「あなたも迂闊に動かないように気をつけてください」


「うっ」


「星からは、今回の責任は統括教授にもあると思われても仕方ないですよ」


「うっ」


「統括教授」


「あ、そうそう、丸山の店でなんか買(こ)うたったか?」


「その件は大丈夫です」


「そうかぁ、ほんで、コミネの奴、気ぃつきよったか?」


「いえ、反応無しでした」


「そうか、そのうち気ぃ付きよるやろ」


「はい、もしも気が付かなければ、促してみましょう」


「いや、その必要ない。それもこれも人生や、ただな、少しヒントをあげてみたかったんや」


「何のヒントですか?」


「人生には波がある、高い波や低い波のことを言うてるんやない」


「?」


「寄せる波と引く波があるから、海の水は動くんや」


「つまり良いことも悪いことも一定しない、と言うことでしょうか」


「そうや、みんなに頑張って欲しいんや。できればみんなの願いを叶えてやりたい」


「でも、私たちは星の使者、私たちの星に願いをかけた時にしか動けない」


「せやね、誰もが幸せだけを願ってる訳やない。ワイらは星の判断に任せとったらええんや」


「はい、では」


「おう、ありがとさんやで」


「失礼致します」


「うん」

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