第22話



 「しかし、そう言われても、これは」


北海道、抜海村にある小さな酒屋で、コミネが目を輝かせながら呟いている。


「ですが、先ほどお伝えしましたように、マルセリーノ統括教授からの言伝ですので、お受け取りください」


「でも、どうして、マルセリーノさんは・・・」


「知っていたんですよ、統括教授は。あなたの思いを」


「確かに、いつか、お礼をしたいとは思っていましたが」


「それで良いのです、そして、そんな思いを持ちながら、夜空の下で呟いた。一度呟くと毎晩のように、そんな夢が叶うようにと本気で願う自分がいた。その願いをマルセリーノ統括教授が叶えた。正確に言うと星からの指令ですけどね」


「星のことは聞いてましたが、まさか自分が、って言う気持ちが本音です」


「マルセリーノ統括教授は、それ以外のことも知っていましたよ。あなた方は決して楽な経済状況ではない、それでも一生懸命に生きている。それが自分のためではなく相手への思いやりからである。そして大切な一人娘のメグちゃんのためであると。それが生きると言うことの本質でもある。そんなことを統括教授はお伝えしたかったのではないでしょうか」


「・・・、あ、はい、ありがとうございます」


「そうそう、そこの棚のシャンペーンを持って帰ったらいかがですか」


「はい、そうします!」


「それと、これ」


「ええ! お代金なんて要りません」


「それはダメです、今はあなたのお店です。だから、そのシャンペーンは私からのプレゼントということで」


 小峰は深く頭を下げた。

そして驚くであろうサエの笑顔を脳裏に浮かべると目頭が熱くなった。

片手には jewelry Maruyama と美しく描かれた小箱を握りしめながら。

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