第20話



 久しぶりに社長の居ない店内では、店員の北村 香、ジュエリーデザイナーの曾我 綾 が密談をしている。


「香ちゃん、久し振りに社長が家に帰ったって、おかしいと思わない? しかも長期間よ」


「やっぱりおかしいですか?」


「当然よ、こんなに長く家から通うなんて数ヶ月振りになるわ。違うわ、半年以上よ」


「ですよね」


 二人は、世界平和のため?にペンギン教という新興宗教を、悪徳宗教を、自分達の手で悪事を暴き出し、正義を世界に知らしめようとしている。


「社長、変わったわ」


「はい、変わりました」


「人間的な方向性では良い方向へ向かっていると思うんだけど」


「そうなのでしょうか?」


「ええ、仕事への打ち込み方が、何て言ったら良いのかしら、そう、そうね、お金にがっついていないって言うか、なんて言うのかな、真っ直ぐに頑張ってきた人なのに、ちょっと余裕ができたっていうか、つまり以前の社長と違うのよ」


「何となく分かります」


「人柄的で言えば、問題無しって言うか、良い方向かな、って思えるところもあるように思えるけれど、どう言えば良いのかしら」


「それって、もしかして、ペンギン教の影響でしょうか?」


「そ、そこなのよ、人柄的に良くなってきたのはいいんだけど、何か違和感があるのよね。その違和感が分からないのよ」


「あのー、例えばですけど」


「いいわ、香ちゃん、言ってみて」


 香は綾に促されるままに思ったことを包み隠さずに言う。


「はい、もしかしてなんですけど、もしかして、お金に興味のない人間に仕上げて、このお店のお金をペンギン教に寄付させようと思っているとか・・・、済みません! あくまでも想像なんです」


「よく言ったわ、香ちゃん。そこだわ、間違いないわ、悪徳新興宗教のやり口よ」


「そ、そうだったんですか」


「香ちゃん、今日のあなた、冴えてるわ」


「あ、ありがとうございます」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る