第14話



 リンは丸山のお勧めの指輪を指に通してみたり、ネックレスを首に下げたりしてみる。

その姿を丸山が写真を撮ったりしている。

実際に装飾品を着けている写真を一つの冊子にしてみようか、という丸山の進言である。


「せやけどなぁ、お前、この店、赤字経営なんやろ?」


「ええ、赤字の月もありますが小誌くらいなら、なんとかなると思います」


「ふーん」


 などと、美しい宝石を身につけた美しいリンの横でぺペンギンと丸山がぶつくさと喋っている。


 そして、社長室の扉の向こうでは。


「やっぱりね、香ちゃん。あの女よ」


「私も見た瞬間に、そう思いました」


「うん、あなた、良い感してるわ」


「はい、綾先輩のおかげです」


「いい? 香ちゃん。社長室に持ち込んだ宝石類は全てチェックしているわね?」


「はい、でも、どうしてチェックが必要なんですか?」


「香ちゃん? 考えてみて。もしも一つでもなくなっていたら? それはペンギン教への貢物みつぎものよ。あの女の容姿を見たでしょ? 社長は色気に騙されているのよ」


「分かります、でも社長がそんな人だったなんて・・・。」


「あなた、青いわ。どんなに真面目な人でも魔が刺す時があるものなの。魔っていうものはね、怖い顔なんてしていないものなのよ。とびっきりの美しい姿で、私だけは貴方の理解者です、なんて言ってくるものなの」


「怖いですね、でも私達は女だから大丈夫ですね」


「香ちゃん、幼いわ。女には美男子がやって来るに違いないじゃない」


「そうか、そうですよね」


「香ちゃん、あなた、結構可愛いから美男子の甘い言葉には気をつけるのよ」


「はい、先輩も気をつけてください」


「・・・・・・・・・。」


二人の間に亀裂が入りかけた瞬間であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る