第15話



 リンは、北海道抜海村に到着している。

木造りの無人駅、迎えに来るものはいない。

大自然に囲まれた無人駅で佇むその姿は、まるで荒野に咲く一輪の花のようである。


 そして、その花は、川沿いのまっすぐな道を歩き、たった一軒しかない宿の隣の、たった一軒しかない土産屋に入って行く。


「ただいま」


「あ、お帰りなさい」


 今は、この店を任されている女主人が応える。


「リンさん、ひとまずお茶でも飲みますか?」


「ええ、疲れてはいないけど、貰おうかしら」


「はい、じゃ、お茶を淹れて来ますね」


「ありがとう、サエちゃん」

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