第11話
ぺペンギンは、今夜も上機嫌でシングルモルトを飲んでいる。
目の前の小皿には、シラスが置かれている。
「ええねぇ、なんやかんや言うても、このちっちゃい魚ちゃんが最高なのよね」
その隣のデスクでは、丸山が過去に得意先で売れた装飾品の品々を調べている。
相手の望むものは何か?
それが今の丸山の営業戦略である。
「どう、見えてきた?」
と、ぺペンギンが声を掛ける。
「そう、ですね、個人個人に個性が、何ていうのか、似たようなものを買ってくださっているのは以前から分かっていたのですが、それで?と聞かれると、うーん、どうすれば良いのか、新しい、って言うか、斬新なデザインは受け入れてもらえなさそうですし・・・。」
「せやね、そう言う所やね」
「うーん・・・。」
丸山は唸り声を小さく上げる。
「お前な、どうや? もういっぺんな、違うもん、売りに行ってみぃひん?」
「いや、それは、ことごとく失敗して来ましたし」
「そこをや、もういっぺんだけ挑戦してみたらって言うてんねん」
「しかし・・・。」
「ドアホ!、しかしも、かかしも、あるか! 振り返ろ! お前な、言葉の使い方を変えて来たやろ? そのおかげで物腰も変わって来たと思わへんか? そこや、分かるか? そこって何処やってか? 考えろ、今のお前やったらできるはずや」
「何処でしょうか、うーん」
「そこや、お前の変わった所は、そこや」
「え?」
「お前な、前の喋り方しとった時な、何でもかんでも思いついたままに言うとったやろ? で、今は、どうや? 考えてから物言うようになったと思わんか? ええか、お前は変わりつつある。決めたら、即、行動に移す、悪いことでもない。でもな、言葉と行動は、選ばれるべき時もあるんや。今のお前さ、考えてから喋れるやん。言動は慎むべきところがあることを、慎むべきその時をお前は理解できて来てるやん。こちらが変われば相手にも変われる時を与えたことになる。それはな、相手の感性の変化に通じる道を、そんな余裕を与えていることにもなると思わへんか? 再挑戦してみたらどうや?」
「それでも、やっぱり大丈夫でしょうか? 心配です」
「まぁ、やってみ。そのうち強烈な助っ人、紹介したるわ」
「はぁ、いえ、はい、やってみます」
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