第9話



 「どう、香ちゃん。何か分かった」


「はい、それが、綾さん」


「どうしたの、どんなことでも良いから、教えてちょうだい」


「はい、綾さん、実は社長、さっきから何やら、ペンギン先生、みたいなことを言ってるんです」


 社長室の扉から耳を離して香が小さな声で答える。


「それはおかしいわ、やっぱり変な宗教に入ったのかもしれないわね」


「どう言うことですか」


「ペンギンを崇拝することで何か良いことがある、みたいな感じかしら?」


「ペンギン教ですか?」


「待って、まだ確定した訳じゃないから。細かい情報が、もっとたくさん必要だわ」


「はい、世の中は情報の時代ですものね」


「香ちゃん、あなた、やっぱり若いわ。情報っていうのはね、集めるだけではダメなの。誤った情報や、勘違いもあるわ。大切な事は、その情報を如何に正しい方向へ持っていけるかの分析能力なのよ。分かる?香ちゃん?」


「はい、そうなのですね。先輩と居ると勉強になります。ありがとうございます」


「亀の甲より歳の功よ、私と居る間は安心して着いて来るのよ」


「はい、着いて行きます」


 これぞまさしく変な新興宗教ではないのか?

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