第7話




 社長が休んだ次の日から二人の女性の諜報活動が始まった。

丸山はといえば、その次の日から社長室から出て出勤している。

つまり二日間の休みを取った事になる。


 その日の朝の出来事である。

香が出勤して来ると店のシャッターは上がっており、店内は明かりで宝石が輝いて見える。

いつもと変わらない光景であるが、香は、そっと店の中に入って行く。

店の隅々を探るように店内をゆっくりと歩いていると、


「おはよう」


 と背後から突然に声を掛けられる。

丸山の声ではあるが、いつもと少し違うように思える。


「あ! はい! おはようございます」


「うん、二日間も休んでしまって、申し訳ない」


「いえいえ、体調はいかがなものでありますでしょうか?」


 引き攣ったような声と顔で香が丸山を気遣う。


「ありがとう、少し顎が痛いんだけど、もう大丈夫だよ」


 そう言うと、丸山は社長室に入って行った。

それと前後して綾が出勤してきた。

綾は、足早に香のそばへ行き小声で話し掛ける。


「見たわよ」


「社長、変ですよね」


「変も何も、あの喋りかたよ」


「やっぱり違いますよね」


「あれはおかしいわ、なんで標準語なの?」


「そうか!」


「やっぱり、これには何か裏があるわ。香ちゃん、ここは私たちの踏ん張りどころよ。いいわね、気を抜いちゃダメよ」


「はい、綾さん、頑張ります」

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