塔の話

 塔には十二人の少女が住んでいた。医師や看護師や家政婦が通っては少女たちの世話をしていた。少女たちはいつも同じ顔ぶれというわけではなかったが、十一人にも十三人にもなることはなかった。塔の十二の部屋にはいつも一人ずつ十二人の少女がいる。そこに謎はないようだった。

 ある時、塔を一人の探偵が訪れた。塔で事件が起きていないか調べるために派遣されたのだ。探偵は塔の内外を隅々まで調べ、少女たちや出入りする人々に聴き取りをしたが、何もつかむことができなかった。そこに謎はないようだった。調査のあいだ探偵は塔の部屋の一つに滞在したが、塔の少女は変わらず十二人だった。そこに謎はないのだ。

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