憧れシアター
私はタイトルをそれに決めた。
少々ダサい感じもするが、私はこれじゃないと納得出来なかった。
だって劇場版みたいな「憧れ」をテーマにした作品なんだもん。
ーそれに私らしくていいもんね。
「ずっと可愛いなって思ってた」
私は思わずドキッとした。
恋愛的な意味でなのか、突然の出来事で驚いたからなのかは、現段階では分からない。
でもその瞬間から、私は彼女のことを今までとは違う認識で見てしまう。
彼女が女子校だからって安心は出来ない。中学の時もサッカー部の男子から可愛いと噂されていたので、絶対に彼女が変なやつに絡まれないとも限らない。
それ以前に、何で私はこんなにも彼女のことを考えてしまうのだろう。
よくよく考えてみると、恋愛的な意味ではないのだと分かる。
でも向こうに恋愛的な意味で好きと言われたら、多分いいよって言っちゃう。
推しという感覚でもないし、親友でもない。友情かと言われてもピンとこない。
建前上、友達ということになってはいるけれど、それを薄っぺらいと感じてしまうのは私だけか。
中学生の時、好きだったはずの人が、彼女を可愛いと言っているのを聞いた時ー。
彼女に嫉妬はしなかった。
それどころか、私はブスだから可愛いと言ってもらえないのは仕方ない。逆に彼女の魅力に気づいてしまった好きだったはずの人に嫉妬してしまった。
そして急激に彼女を可愛いと思うようになった。もし彼女に好きな人が出来たら、応援はするし協力もする。でもその相手によっては無理な場合もある。
そんなこと言ったって、どうにもならないけどね…。
でも彼女に「ずっと可愛いと思ってた」と言われてから、私は変わってしまった。
今まで女子特有の厳しい目を向けられるのが嫌で、オシャレや洋服に対して苦手意識があった。
ーそんなのは彼女の一言で吹っ飛んで行った。
彼女に可愛いと思ってもらえるのなら何でもする。オシャレだって本当はしたくてしょうがなかった。ネックレスだって大好きだし、イヤリングも軽い方が頭が痛くならなくて良いとか、そんなことまで知っていた。
本当に彼女には感謝している。私を解放してくれた。
もう素直になろう。ひねくれたり逃げる必要なんてないんだ。
ずっとそばにいてくれた彼女に精一杯の恩返しをー。
教室移動の時、数えきれないほど一緒に廊下を歩いた。
席もよく近くになったよね。学校で会った時は必ず手を振って、たくさん喋った。
辛い時、ずっと近くで見守ってくれてた。遊びにも行った。
1回だけ駅のホームで目が合った時、すごいドキドキした。
お互いにさ、相手に好かれたいって思っているとは思うよ。
でも好かれるっていうのは、自分を偽るのは違うという戒めにもなる。
本来の自分で、本来の自分を表現するんだ。
ありのままの自分で認めてくれる相手。お互いがお互いにしか出来ないこと。
この世界で必要ない人間なんていない。
みんな誰かが誰かにとって必要な人なんだ。
それを知れた私は世界で1番幸せだ。
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