1.05 お披露目します! 後編

 母親たち女性陣は今頃、温泉にゆっくり浸かっているだろう。

 その子どもたちにはゲームをさせて、面倒をゴーレムたちに見てもらっている。

 そして、大人の男性陣には俺の愛したゲームをこれから始めるところだ。


 もちろん、異世界版としてわかりやすく作ったつもりでいる。

 さて、どんな反応を返すだろうか? 楽しみだな。



「席に着いたぜ、旦那」

「こっちも準備できた」

「楽しみなんだな!」

「酒のために頑張りたいねえ」


「今回だけ特別に観戦用の賭けるポイントを渡しておくな。順位によってプレイしてくれた大人にポイントがガッツリ入るようにしてるから安心してくれ」


 周囲の大人たちが誰に賭けるかと話し合っている。

 ゲームが始まるまでに早めに賭けてくれよ?

 席に着いた大人たちにも反映されるので喜んでくれている。

 先行プレイのオマケだ。これくらいは許そうじゃないか。




 さて、実際にゲームをプレイしてもらいながら、ルールの説明をしていく。

 まずはランダムに五枚のカードが目の前に配られる。

 いわゆるドラフト回って奴だ。

 この中から最初に一枚選んでもらう。


「俺はこの兵士を選んでみるか。なんか頼りなさそうだなあ」

「じゃあ、俺はこの魔法使いかな。火の絵が描かれてるから、炎が出せるのか?」

「魔物しか選べないんだな!? じゃあ、このこん棒を持ったゴブリンで……」

「魔物だけとか可哀想だなって思ったら、俺もかよ! なら、俺はゴーレムだ!」


「じゃあ、次は成長ラウンドの開始だ」


「おお、俺の兵士がなんか犬っころと戦ってるぜ!」

「頑張れ! 火で追い返せ!」

「倒せば成長するんだか? なら、やっつけるだ!」

「さすがゴーレムだぜ。噛まれても屁でもねえぜ!」


 おお、意外とのめり込んでるな。周りの人たちまで応援してるのがいい証拠だ。



 成長ラウンドでは弱い敵と戦ってもらう。

 この敵は成長ラウンドを繰り返すことで徐々に強くなっていく。


 このラウンドで勝利すると、戦った駒たちが成長できる。

 カードが三枚、目の前に提示され、それぞれに剣、盾、杖の絵柄が描かれている。

 これを選ぶことで自分が選んだ駒すべてが剣のカードなら攻撃力、盾なら防御力、杖なら魔法力と成長していく。


 ただ、これはあくまで成長の方向性を示すだけだ。

 どれを選んでも悪いことにはならない。まあ、これは説明しなくてもいいだろう。

 プレイしていくうちに彼らが発見すると思うからな。

 全部教えてしまうのは簡単だけど、それじゃあ面白くないだろ?



 成長ラウンドを終えたら、また自陣の駒を選ぶドラフト回だ。

 それを計三回行ったら、いよいよ対人ラウンドが開始される。

 総当たり戦を行って、プレイヤーに設定された体力が0になったら脱落となる。


 一対一の戦いなので、次第に周囲の応援の声にも熱が入っていく。


「負けるな、そこだ! いけ!」

「なにやってんだ、弓兵!? 前に出るな! 逃げて奥の奴を狙え! ああもう!」

「あのゴブリンなんか強くね? 仲間を呼んでるぞ!」

「ゴーレムだから守りは堅いけど、行動が遅くて攻撃が当たらねえ!」


 ちなみに、戦闘は自動で行うため、プレイヤーは駒たちを見守るだけになる。

 つまり、プレイヤーは駒の配置だけしか出来ない。だが、この配置が肝なのだ。

 先ほどの戦いでも弓兵が最前線に配置されていたため、ボッコボコにされていた。


 このように陣地の後ろで戦う方がいい駒もあるのだ。

 一回目の総当たりが終わった。一戦一戦の間にはドラフト回を挟んでいる。

 ここで成長ラウンドを挟んで自陣を強化して、また総当たり戦だ。

 この総当たり戦で、たぶん一人は脱落するだろうな。


 負けたのは……。


「くっそぉ! 攻撃さえ当たれば一撃で倒せるのに、当たらねええええ!」


「弓兵を後ろに配置し直したから、なんとかなってるけど厳しいな……」

「最初の火の魔法使いが強いな。全員を指揮して範囲魔法使うのがいい」

「オラのゴブリンくん、どんどん偉くなるんだな。みんな強化されていくんだな!」


 酒を欲しがってたオッサンが最初に負けたか。

 周囲に賭けられたポイントが入るから、あとで酒と交換するんだろう。

 勝ちを期待されていたみたいだけど、あの人自身に人気があったみたいだな。

 まあ、それでも負けは負けだからな。賭け金は没収っと……。



 次の総当たり戦で負けたのは兵士団を率いていたオジサンだ。

 健闘はしたみたいだが、最初の駒の配置ミスで体力が削れていたのが響いたな。

 観戦している大人たちの落胆だったり、ライバルが消えて喜ぶ叫び声でうるさい。

 だが、子どもたちの気を引くのはいいぞ? もっとやれと言ってもいいのかな?



 そして、最終局面となった。

 殲滅魔法で魔法兵団が勝つか、数の暴力でゴブリン軍が勝つか。

 これは初戦にしてはいい戦いが見れるな。


「魔法さえ使えれば、魔法さえ使えれば!」

「あいつだ、あいつさえ落とせば勝てる!」

「いけ、今だ! 魔法を使え! あっ……」


「オラの勝ちなんだなああああ!」


 勝利したのはゴブリン軍を華麗に操った彼のようだ。

 このゲーム、魔物だとバカにしてはならない。

 意外な強さを発揮するかもしれないといういい例となったな。


「負けちまったかー。まあ、二位だし、それなりにポイントも入っただろ?」


 負けた彼は本当に堅実だなあ。

 奥さんと子どものために保湿パックとお菓子を交換している。

 いつか夫婦仲の秘訣でも聞いてみようかな。


 俺にだってそれくらいの興味はあるさ。わ、悪いかよ……。

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