ピンキーリング

直径16.7ミリメートルの窓を覗くと

薄桃色の貝殻が見える

月光を浴びると

カーテンはゆっくりと膨らむ

そうしてできた湖から

光を両手いっぱいにすくって口に運んだ


まっくろになるあなたの左手の小指

表面が少し剥げた直径16.7ミリメートル

6Bなんて使うからだと言ってみたりはしたけれど

君が手を振れば桜の花びらが舞うのだと

君の 心の隅に忘れてはならぬことに気づき そのままの君を描きたいんだと


泳ぎ方がわからないから

沈まないように息を吸う

息の吐き方を知らないから

想い出が重なる

貝殻と花びらを重ねたことも

小指を絡めてふたりだけの約束をしたことも

思い出せないだけで忘れることはないのでしょう


半径6.7ミリメートルの窓を覗くと

桜の花びらが舞ったようだった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幸せの一画目 川上 世普 @ns47y

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ