第七話 雪
視界が揺れ始め、肌は雪によって凍るほどの極寒が襲ってきた。
その一方、黒崎は歩みを進めるたびに、意識が遠のいていくのを感じた。ここで果てるわけにはいかない。イザベラや父の死が無駄になることを思うと、意志を強く固めて足を進めた。
そして、目の前に金髪の女性が立ちふさがった。彼女は拳銃を構えている。黒崎は何もできず、彼女の銃口から発砲音が響いた。銃弾は黒崎の肩を直撃し、激痛が全身を襲った。
哀しみに満ちた情景が広がる中、黒崎は無力感に打ちひしがれた。彼は倒れ込み、苦悶の声を漏らした。その痛みと絶望に、彼の心は重く沈んでいくのを感じた。
何もできない自分に、悲壮な感情が募っていった。金髪の女性は黒崎に近づき、アーサに問いかけた。
「生きたいのか?」
大声で黒崎は叫んだ。
「当たり前だろうが!」
彼女は拳銃を黒崎の頭に突きつけ、言った。
「うまくいかないことが人生なんだ!嫌なことが起こるからと言って全てを否定するのか?でも私はそんな風にはしない。なぜなら、それが人生だからだ。罪人でも善人でも、みんな同じように歩んでいる。」
黒崎は再び怒鳴りつけた。
「道徳を教えに来たのならうせろ。」
彼女は拳銃の引き金に指をかけながら言った。
「お前の父親から教わったことだよ。私は地球外生命体との協定を結ぶことを目指していた。しかし、うまくいかなかったところでお前の父親に救われた……」
悲壮な雰囲気が漂う中、黒崎の心には葛藤が渦巻き、彼女の言葉は彼に大きな衝撃を与えた。
彼女は言葉を続けた。
「これが黒崎秀治の子供か……情けない。父親の背中に泥を塗る存在だな」
黒崎は掠れた声で言った。
「父親の何がわかるってんだよ!お前なんかに」
その瞬間、黒崎の意識は徐々に遠のいでいった。微かな光景の中で、アーサがエリザベスの手から拳銃を奪い取っているのがうっすらと見えた。
「やめろ、エリザベス。」
アーサの声が怒号と化した。
「この男は秀治の息子だ。弱さを嘲笑うな。彼をここで殺すつもりか?」
エリザベスは激しく反論した。
「情けないくらいに弱い。このままでは生かしておく価値もない。殺すべきなんだ!」
アーサは凛然と言い返した。
「そんな行為で秀治は喜ぶだろうか?あの人は我々に違う道を示した。彼の望みを裏切ってはならない。」
息が詰まるような緊迫感が全身を支配した。黒崎の運命が糸口なく揺れ動くなか、アーサとエリザベスの対立が頂点に達していた。
黒崎はまた何もできないことを悔やんでいた。情けない自分を。
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