第十三話 アーサの過去 Part6

リチャード刑事は一日の勤務を終え、自宅に帰宅すると、疲れた体を休めるために寝室に直行した。しかしその瞬間、リビングから物音が聞こえ、リチャード刑事は警戒心を抱いて急いで駆けつけた。


リビングにはボーガンを手にした、顔の焼け爛れた女性が立っていた。「お前は何者だ!」とリチャード刑事は声を荒げ、腰のホルスターから拳銃を抜いて女性に照準を合わせた。


「忘れちゃったの?私はサラよ」と女性は冷たく告げた。リチャード刑事は青ざめ、サラの姿を見つめた。「まさか、嘘だろう。お前は明らかに家族と共にアームストロングによって殺されたはずだ。ただ一人、生き残った人間がいたはずだが」


サラはボーガンをリチャード刑事に向けながら言葉を紡いだ。「あなたが生死を偽装したように、私も生死を偽装したの。あなたの兄弟、アーサとの電話を盗み聞きしていたの。あなたが兄の死を偽装したという情報をつかんだわ」


「お前の言っていることは... 生死を偽装したってことか?」


「そうよ、アームストロングは家族を殺すことで快感を覚えたの。手に血が滴り落ちる感覚が最高だったって言っていたわ。彼にとって、人生で最も幸福な瞬間だったんだって」


サラの顔は次第に怖ろしい般若のような表情へと変わっていき、ボーガンのトリガーに指をかけたが、リチャードの口元をかすめただけだった。リチャードはサラの腹部に銃を撃ち込んだが、彼女は倒れたものの、身に纏っていたボディアーマーのおかげですぐに立ち上がった。リチャードは拳銃を手に滑らせてしまい、床に落としてしまった。そこでリチャードとサラは壮絶な格闘を繰り広げた。拳を交える中、サラがリチャードを蹴り飛ばし、リチャード刑事はガラスを破り、中庭に吹き飛ばされて倒れ、気を失ったように見えた。サラは近づいてきて、彼が無力化されたと思い込んだ。しかし、実際にはリチャードは狸寝入りを演じていただけで、まだ生きていたのだ。サラの足に突き刺さったガラスの破片を利用し、リチャードは立ち上がった。彼は精悍な表情でサラの顔面を足で蹴り飛ばした。


その時、急に警察車両のサイレンが聞こえた。「はぁ――はぁ――近隣住民が通報したのか」とリチャードは言い、すぐに中庭から出ると、そこには警察車両が到着していた。


「こっちに来てくれ、イカれた女が自宅に侵入し、私を襲ってきたんだ」とリチャードは警察官たちに話しかけた。二人の警察官がリチャードの家に入ったが、サラは既に逃げてしまった。


一人の警察官がリチャードに向かって言った。「自宅を確認しましたが、女性は見つかりませんでした。おそらく逃げたのでしょう。周辺200kmに検問を設置します」と言い、無線で指示を出した。


「差し支えなければ、女性の特徴を教えてください」とリチャードに尋ねる警察官に対し、彼は言葉を飲み込んだ。「申し訳ありませんが、暗闇の中でよく見えませんでした。ただ、襲われている時にガラスの破片が彼女の足に突き刺さったことは確かです」と答えた。


警察官は理解した様子で頷いた。「わかりました。リチャード刑事、救急車を呼びますね」と言い、救急車を要請した。その後、30分後に救急車が到着し、リチャードは慎重に搬送されていった。


アーサは車の中でラジオを聴いていた。そのラジオからは次のようなニュースが流れた。


「リチャード刑事、ジョーンズ氏が深夜、自宅に侵入され女性に襲撃されました。現在、犯人女性は逃走中ですので、地域の皆様はくれぐれも注意してください」


アーサは心配になり、担当刑事であるリチャードのことを気にかけ始めました。気持ちを抑えられなくなった彼は、かつてもらった名刺に書かれた番号を手に取り、公衆電話でそれをダイヤルしました。


「もしもし、アーサです。大丈夫か?」


「あぁ、大丈夫さ。心配するな、ただ用心するんだ」


「わかった。用心するよ」


電話口からは切りながらのため息が聞こえました。アーサは安心した様子で、インパラに戻り、そこで眠りにつきました。太陽の光が差し込む中、彼は目を覚ましました。


リチャード刑事の傷も癒え、病院から退院を試みると、そこには看護師の姿を纏ったサラが現れた。彼女は冷酷なまなざしでナイフをリチャード刑事の首筋に突き立てた。瞬く間に血しぶきが飛び散り、リチャード刑事は苦悶に満ちた表情を浮かべた。


サラは執念深く探し求めた末、リチャード刑事のポケットから携帯電話を巧みに抜き取り、そこに保存されている連絡先をたどった。ついに彼女は兄の居場所を特定し、逃走へと向かう前に冷酷な微笑みを浮かべ、携帯電話を手に握りしめた。


その後、運命の糸が交錯したかのように、通りすがりの医療従事者がリチャード刑事の絶望的な状況に気付いた。彼は助けを呼び、リチャード刑事は急遽手術室へと運ばれた。しかし、冷たい手術室の中で、彼の息は静かに途絶えてしまった。


一方、アーサはインパラの車内でラジオから伝えられる悲報を耳にした。リチャード刑事の突然の死が彼の胸に悲しみと疑問を呼び起こし、深い衝撃が響いた。出来事の波が彼を飲み込んでいく中、アーサは逃げ場を求めて飲み屋へと駆け込んだ。

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