第十二話 アーサーの過去Part5

アーサーはインパラで夜風を感じながら走っていた。彼は「まさに夢が叶った!ドラマで主人公がインパラに乗っているのに憧れて、ついに手に入れたんだ」と心の中で思いながら、2時間も運転していた。その先に広がる緑の丘が目に飛び込んできた。アーサーはこの景色を見て、かつて叔父と過ごしたキャンプの思い出がよみがえり、ここで一晩を過ごそうと決めた。


「車を停めて、行ってみるかな」と彼はつぶやいた。


彼は車を停め、緑の丘で夜空を仰ぎながら寝ることにした。


美しい歌声が聞こえてきたため、アーサーは目を覚ました。その歌声は風景のような美しさがあり、心を穏やかにしてくれるものだった。自然と歌声の方へ誘われ、そこには若く美しい女性が木の根元に座り、歌っていた。


アーサーは彼女を褒めるように言った。「素晴らしい歌声ですね」。


彼女は謙遜しながら答えた。「いえいえ、下手なんですよ。お名前は何とおっしゃいますか?」


「私はアーサーと言います」と彼は答えた。


「アーサー、かっこいい名前ですね!私はリャナと申します」と彼女は言った。


こうして、リャナとアーサーは太陽が昇るまで語り合った。しかし、自然と眠気が押し寄せ、二人は知らぬ間に眠りに落ちてしまった。


「あれ? いつの間にか寝てしまった。リャナはどこにいるんだろう?」彼は周囲を見回したが、リャナの姿はどこにもなかった。


「まさか…」アーサーは彼女の不在を悔やみ、寂しさを感じた。


「もう一度インパラに戻ろうかな」と彼は考えた。


しかし、彼がドアのノブに手をかけた瞬間、めまいが起こり、視界が暗転し、彼は倒れ込んでしまった。


目を覚ますと、彼は病室の中にいた。「アーサー・ウィリアムさんが目を覚ましました」と看護師が言った。


アーサーは状況が飲み込めず、質問した。


「あの、なぜ私は病室にいるんですか?」とアーサーは尋ねた。看護師の後ろに医者が現れ、説明を始めた。「私が担当のマイケルです。ウィリアムさんは貧血ですね。倒れているところを知り合いの女性が通報したそうです」。アーサーは説明を理解すると、退院手続きをして病院を後にした。


病院を出たアーサーの目の前には、リャナがインパラに乗って待っていた。「リャナ……それ、俺の車なのか?」とアーサーは尋ねた。「そうよ!あなたの車だわ。私がトイレから戻ったら、車の前で倒れているのを見つけたの。心配で救急車を呼んだの。アーサーの車をそのままにしておくと、盗まれちゃうと思ったからここまで連れてきたのよ」とリャナが答えた。「カギはどうしたの?」とアーサーは尋ねると、「あ、カギは車の近くにあったからそれを使ったわ」とリャナが返答した。「なるほど」とアーサーは納得し、リャナと一緒に飲み屋に向かうことにした。その後、二人は夜まで飲み明かすことになった。


「あ、飲み過ぎたな……」とアーサーは言った。アーサーは視線をリャナに向けると、彼女はベロベロに酔っており、アーサーにべったりと寄り添ってきた。「一目見た時から、あなたのことが好きだったの」とリャナが告白した。アーサーは生まれて初めてそんな言葉を聞き、とても嬉しくなった。


すると、リャナはアーサーにキスをし、2人は飲み屋にある宿に入り、その後は一夜を共にすることになった。夜中に目を覚ますと、アーサーはリャナが首を噛んで血を吸っているのを目撃した。アーサーは反射的にリャナを突き飛ばし、手元にはハンドガンがなかったので、近くにあるほうきをリャナに向けた。「お前は一体何者だ!リャナ」とアーサーは怒声を浴びせた。



「私の名はリャナンシー」とリャナは静かに告げた。「リャナンシー……」アーサは驚きを隠せなかった。「車の中にあった手帳を見たら、あなたはワイルドハントのかしら?」アーサは否定するように頭を振った。「ワイルドハントではない。それに手帳はとは何だよ!」リャナは微笑みながら答えた。「嘘よ、あなたはきっとワイルドハント。そしてその手帳には、私たち地球外生命体に関する秘密が書かれているのですわ」。彼女はアーサが持っていた手帳を取り出し、特定のページを指さした。「これは……」


しかし、リャナンシーの態度が一変し、彼女はほうきを掴みながらアーサに向かって突進してきた。アーサは素早く身をかわし、近くにあったほうきを手に取って応戦した。「お前は一体何者だ、リャナンシー?」アーサは声を荒げた。


リャナンシーは怒りに満ちた表情でアーサを睨みつけ、彼女の美しい姿が一瞬で老婆の姿に変わった。アーサはその隙を見逃さず、折れたほうきを手にし、リャナンシーに刺突した。


アーサは手帳を手に取り、インパラに乗ってただちに駆け出した。数キロ進んだ後、インパラを停めて一息ついた。「信じられない話だ。貧血を起こしたのも彼女のせいだったのか……」アーサは手帳の特定のページを開き、以下のような文章を目にした。


「リャナンシー - 別名、妖精の恋人。この地球外生命体は男性を歌や詩で誘惑し、誘惑した男性の血を触手で吸う。彼らにとって血が主食であり、カメラで撮影すると目が赤く光ることがある。彼らの本体は老婆の姿をしており、攻撃を加えなければ倒すことはできない。一度彼らの狙いを引くと、執拗に追いかけてくるのだ。」


アーサは自らの失態を二度と繰り返さぬよう、固い決意を心に秘めた。その後、リチャード刑事は通報を受け、現場へと急行した。部屋は宿の一室で、老婆が倒れている様子が広がっていた。リチャードは監視カメラに犯人の姿が映っているはずだと考え、従業員に監視カメラの映像を提供するよう要請した。緊張の中、監視カメラの映像を確認すると、そこにはアーサと女性の姿が映し出されていた。女性は瞳が赤く輝き、その不適な笑みはリチャードの心に不穏な気配を醸し出した。彼は思い切って監視カメラの映像を無断で削除した。

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