第十一話 アーサーの過去Part4

アーサは手帳の1ページ目を開き、そこに書かれている内容を確認していた。ページには鮮やかな文字で「ピアサ」という言葉が浮かび上がり、身体的特徴や異常な力について細かく描かれていた。そして、最後の行にはアメリカイリノイ州にいると書かれていた。


アーサは即座に行動を起こし、アメリカイリノイ州へと向かった。到着した時は夜で、疲れた体を休めるために宿を借りることにした。「よく眠れたな...さて、テレビでもつけてニュースを見てみようか」とアーサは宿のテレビを操作した。


「アメリカイリノイ州立大学で、エリサ・ブラウン氏とマイケル・スミス氏の男女2名が敷地内で無残な遺体として発見されました。警察当局は動物の襲撃と殺人の両方について捜査を始めています」と、ニュースのアナウンサーが報じた。


テレビの電源を急いで切り、アーサは焦りを感じ始めた。「本当か...これがピアサの仕業なのか?でも、そんなことはありえないはずだ...しかし、場所はイリノイであり、残虐な遺体が見つかっている...もしかしたら、現場に行くべきかもしれないな...」


支度を整え、アーサは宿を出てアメリカイリノイ州立大学へ向かった。正門付近では保安官たちが黄色いテープを張り巡らせ、警戒態勢を取っていた。「どうしよう...このままでは現場には入れないな...裏側から侵入するしかないか...」


アーサは壁をよじ登り、現場に近づこうとしたが、捜査官たちの目に留まり、入場を許されなかった。結局、彼は遠くから現場を見つめることになった。「裏から入るつもりだったのに...もしかしたら、車から見た方が良かったのかもしれないな...まぁ、いいか。事件現場にある木々は、人為的に折れているように見えるな」と、アーサは自身の推理に耽っていた。

深夜の静けさに紛れ、噂の言葉がアーサの耳に届いた。それはまるで影から囁かれるような声だった。「知ってる?」「何が?」「今回の事件にはあのピアサが関わっているんだ」「冗談よしてよ!あれはただの言い伝えでしよ!!」「それが違うんだ。最近この学校でピアサを見たて人が沢山いるんだ!」「信憑性ないね、第一見間違いじゃないの」「そうかな」。


アーサは噂の真偽を確かめるため、学校の数名の生徒に尋ねてみた。彼らは一様に口をそろえて「ピアサをこの学校で見た」と答え、ピアサが事件に関与していることを示唆した。この驚くべき情報にアーサは興味を抱き、「ピアサが確実に関わっているな。手帳には人肉の味を覚えると人々を襲い出すと書いてある。早く見つけないと……。この学校にもしかしたらまた来るかもしれない、このまま大学に居て来るまで待っているか」と考えた。


そして、時間が経ち夜が更けると、鳥が羽ばたく音が聞こえ始めた。アーサはピアサの存在を確信し、音の方向に向かって進んでいく。そして、そこには四本の脚を持ち、鱗で覆われ、背中には大きな翼を広げた姿があった。その全身は赤、黒、緑の三色で彩られており、頭には鹿の角に似た形状の角があった。この姿は、アーサが手帳に書かれたピアサの特徴と一致していた。


「よし、殺すか!ピアサはまだこっちには気づいていない。後ろから言ってそこで殺ろう!」アーサは近づき、ピアサに気づかれないよう慎重に後ろへと忍び寄った。しかし、後ろに回った時に彼は恐ろしい事実に気付いてしまった。手に持っていたはずのハンドガンがなかったのだ。彼の顔は一瞬にして真っ白になった。


「……あ」とアーサは唖然とした表情を浮かべた。ピアサは突然後ろを振り返り、アーサと目が合った。そして、恐ろしい雄叫びを上げながらアーサに向かって突進してきた。


「やばい、このままではやられる!まずは車に戻り、ハンドガンを取りに行くか」とアーサは思いつめながら車の方に全力で駆け出した。車に近づく直前で、ピアサがアーサの体に飛びかかり、その四本の脚でアーサの手を抑えながら噛み付こうとした。


「あ、このままでは死んでしまう…ううう…」とアーサは必死になってピアサに頭突きを繰り出した。ピアサはよろめき始め、その隙にアーサは車の中からハンドガンを取り出し、ピアサに向けて三発撃ち込み、見事に命中させて倒した。


「倒したな…」とアーサは安堵の表情を浮かべ、しかし、ピアサをそのままにしておくわけにはいかないと考え、ピアサを車の後部座席に押し込んで車を発進させた。


「森の中で埋めるか」とアーサは近くの森を目指して走り始めたが、後部座席からガサガサと音が聞こえ、車の運転席が突然蹴り上げられた。


「おおおおおお!!!」とピアサの鳴き声とともに、彼は暴れ出し、車を道路に停止させた。アーサはハンドガンと手帳を手に取り、車の外に出て行った。


「おい、マジかよ。殺したと思ったが、生きてやがったか。しぶといな」とアーサは苛立ちながら呟いた。ピアサの車内での暴れにより、ガソリンが漏れていた。


「これで終わりだ、ピアサ」とアーサは決意を込め、ハンドガンをガソリンに向けて撃ち込んだ。爆発が起き、ピアサは確実に命を落とした。


一安心したかと思ったが、アーサは移動手段の車が爆発したことに焦りを感じた。


どうしよう、車がなければ移動できない…ああ」とアーサは頭を抱え、嘆きながら考え込んだ。しかし、そこでアーサは街に向かうことを決意し、歩いて道路を進み、昼に街に到着した。銀行からお金を引き出し、車屋に向かってインパラを購入し、アーサは新たな車に乗り込んだ。


3時間後、リチャード刑事は道中で爆破された車を発見し、その車の中には焼かれた生物の残骸があった。リチャード刑事は車から出て確認しようとした。


「……この車、アーサか、いや、同じ車を持っている人も多いか。しかし、このナンバープレートはアーサが乗っていた車と一致する!」とリチャードは驚きを隠せなかった。


「ああ、アーサの野郎、何をしてやがる!この焼かれた生物は見た目的にピアサか…」とリチャードは呟きながら、すぐにある人に電話をかける。


「アーサはピアサを殺した。ピアサを殺したことで真相に少しずつ近づいているんだ!お前が家族を殺した男だとバレるぞ、アーサに!!!!!」とリチャードは声を荒げた。


「それでいい!リチャード、病院の医師や警官を買収して、俺の生死を偽装してくれてありがとうな」と相手は言った。


「問題ないさ、仲間だろ」とリチャードは答えた。そして、2人は電話越しで大いに笑い合った。しかし、電柱の陰から、顔の焼け爛れた人物が彼らの姿を見ていた。

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