第十話 アーサの過去Part3

アーサは取り調べ室の中で怒りに震え、声を荒げた。「もう何なんだよ!殺してもないのに犯人にされたり叔父さんが殺されたり、地球外生命体だったり、めちゃくちゃだ!」


取り調べ室の扉がゆっくりと開き、そこにはかつて家族を皆殺しにした事件の担当刑事であるリチャードが姿を現した。アーサは彼を睨みつけ、口が裂けるかのように再び怒鳴った。「なぜ俺を逮捕したんだ!」


リチャードはゆっくりと答えた。「病院に事件が起きたという情報が寄せられた時、警察に連絡するしかなかったんだ。そういう決まりなんだよ。そして、アーサの身体の状態から犯人だと思われた。それで今の状況に至ったんだ。私は知り合いの警官からこの情報を聞いて、すぐに駆けつけた。もし来なかったら事件の犯人にされていたかもしれない。私が手続きを進めておいたから、今日中には出られるよ」


アーサはリチャード刑事に対し礼を言い、穏やかな声で応えた。「ありがとう、リチャード刑事」


リチャードは続けた。「実は、お前の家族を殺した犯人がアームストロングを殺した可能性があると思っているんだ。あくまで憶測だが、その人物は他の人を利用して情報を偽り、呼び出し殺害に至ったのかもしれない。この捜査は続けられるから、もし何か情報を得たら教えてくれ、アーサ」


アーサは黙って話を聞いていたが、疲労困憊していることやリチャードに対する疲れも伝えた。そして、モーテルに向かおうとしたが、車がないことに気づき、近くにいる警察官に尋ねた。「すいません、アーサ・ウィリアムズですが、車のことを知りませんか?」

アーサは悔しさと残念さに包まれながら、手がかりの手帳を失ったことに対する無力感が心を押し潰した。手を頭に当てながら、その失敗に対する後悔が胸を締め付けた。


しかし、アーサはあきらめることなく新たな解決策を模索した。目に留まったのは車の中のダッシュボードだった。


「もしかしたら手帳は車の中に入れたかもしれない。ダッシュボードを調べてみよう」とアーサは一縷の望みを胸に、ダッシュボードを開けることを決意した。


ダッシュボードをゆっくりと開けると、そこには手帳がオーグルの住処に落ちているのを発見した。アーサの顔には一瞬の安堵が浮かんだ。「やった!見つけた!」と彼は喜びを抑えきれずに声を上げた。


しかし、問題はまだ解決していなかった。アーサは眠る場所の問題に直面していた。「どこで寝よう。捜査現場になってしまったモーテルでは寝られないし、近くにホテルがあったかな」と彼は考え込んだ。


諦めることなく探し回ったが、ホテルは見つからなかった。アーサは仕方なく近くのスーパーの駐車場に車を停め、車中泊をすることにした。


夜が更けるにつれて、激しい雨が降り始めた。雷鳴が轟き、アーサは雨音に時折うなされながら目を閉じた。


翌朝、アーサは起きると同時に「昨日の出来事が夢だったらなあ」とつぶやいた。しかし、彼は現実と向き合わなければならないことを思い出し、ハンドルをひとたたきした。


手帳を取り出し、ページをめくると、最後のページの端っこに電話番号が書いてあるのを見つけた。アーサは自身の携帯電話を持っていなかったため、近くにある公衆電話を探し、その番アーサが到着した場所は、まるで貴族が住むような立派なお城だった。彼は漠然とした疑問を抱きながら、口をついて出た。


「……ここはすごいけど、想像していたのとはちょっと違うな。むしろボロい小屋の方が合ってる気がするけど…」


アーサはお城の門の前に立つと、監視カメラが彼に向かってスピーカーから「入れ」と言った。暗く嫌な予感が胸に広がっていく。


「この人は何をしに来るかわからないから、警戒は必要だな」とアーサは足元に隠し持っていた銃を確認し、手帳を手に取って門をくぐった。


そしてお城の玄関に到着したとき、ひつじのような人物がドアを開けてアーサを迎えた。


「こちらに来てください。お待ちしておりました」


アーサはひつじの人に従って周囲を見回した。骨董品や銅像、意味不明な置物がケースに入っている光景に彼は驚いた。


「まるで博物館みたいだな。触らないようにしよう。もし何かを壊してしまったら…」


「了解しました」とアーサは答えた。


5分後、彼は案内された部屋に到着した。そこには髭を生やし、小太りのおじいさんがいた。


「君があの手帳を見つけた人かね」と彼が言うと、アーサは怒鳴り声を上げた。


「この手帳は一体何なんだ!」


おじいさんは微笑みながら答えた。


「この手帳には、神話や伝承に登場する神様や怪物を装った地球外生命体に関する情報が書かれているんだよ」


アーサは理解できないことがたくさんあったので、質問攻めに出た。


「それなら、この意味不明な言語は何なんだ?」


おじいさんは答えた。


「この手帳は一見すると意味不明な言語だが、上から炎をかざすと読めるようになるんだ」


アーサはライターをポケットから取り出し、手帳に近づけて炎をかざした。すると、文字が自然に読めるようになった。


「謎めいているが、この手帳が彼らに見つかったら大変なことになるから、制作者がこのような仕組みにしたんだ。ただし、その原理については説明できない。あまりにも複雑でね」


「私の名前はハンク・ウィリアム。君の名前は?」


「アーサ・ウィリアム」


ハンクは不敵な笑みを浮かべた。


「理解しにくい話かもしれないから昔話をする」


かつて昔、ある一族が神話や伝承の書物を創り出していた。その一族は神話や伝承を目の当たりにし、それを筆に写し取る使命を負っていたと言われる。ある日、一族の存在に疑問を抱いた人物が問いかけた。


「何故、貴方たちは地球に存在しているのですか?」


一族の全員が同じような口調で答える。


「我々は遙か彼方の惑星から連れてこられたのです」


疑問を抱いた質問者は再び問いただした。


「では、何故連れてこられたのですか?」


すると一族はこう答えた。


「我々自身もその理由に疑問を抱いているのです」


そして、一族は驚愕の事実を明かした。


「我々の食物は人間なのです。我々が住む惑星には、人間と同じ味がするものが我々の主食なのです」


質問者は恐怖に震えた。彼は彼らが危険な存在であると感じ、一族の秘密を全て報告した。その結果、一族は「ワイルドハント」という軍団を組織し、神々や怪物たちを殺すよう命じた。


淡々と説明を続けるハンクは言った。


「私が知る限りでは、それが全てです。その中のワイルドハントの一員がこの手帳を作りました。なぜかは分かりません」


アーサは理解できないままでいた。


「ハンクさん、何を言っているのか理解できません」と彼は言った。


ハンクは真剣な表情で命令を下した。


「アーサ、手帳に書かれていることを断つことで、疑問の答えが明らかになるでしょう」


アーサはハンクが何か不思議なことを知っていると感じ、足元に隠していたハンドガンを取り出し、ハンクを脅し始めた。


「ハンク! なぜそのように答えるのか、何かを知っているのか?」しかし、ハンクは笑みを浮かべつつも何も答えなかった。


アーサはハンドガンをハンクに向けた瞬間、後ろから誰かが忍び寄り、鈍器で彼の首筋を殴りつけた。痛みに耐え切れず、アーサは気を失ってしまった。


目を覚ますと、彼は見知らぬ路地裏に身を置いていることに気付いた。アーサは思い出した。この場所は、ハンクの住んでいる場所に向かう途中で通り過ぎた場所だった。彼は足早にハンクの住まいに向かったが、到着した場所はアーサの車が鎮座しているだけで、屋敷は廃墟と化し、混乱を覚えた。


「一体何が起こっているんだ?最近は理解できない出来事が多すぎて、頭が追いつかないようだ…」


アーサは車に乗り込み、助手席に手帳とハンドガンが置かれているのに気付き、ますます疑問が湧いてきた。


「さっきの出来事は本当だったのか?それとも誰かによって幻覚を見せられたのか?」


自問自答しながら、アーサは幻覚ではないという確信を抱いた。そして、叔父や家族を殺害した男、そしてハンクの指示に対して覚悟を決めた。彼の旅が始まるのだと。




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