三話 狂気

狂気は黒崎を襲い、その身体を蝕んでいく。暗い闇が全身を包み込み、無数の触手が彼を縛り付けるように絡みついた。


目の前に広がる光景は、橋本の無残な死体がばらばらに散り散りになっている光景だった。黒崎は狂気に満ちた笑い声を再び上げる。


次に彼が襲いかかるのは鬼たちだった。鬼は恐怖に怯えながらも助けを求める悲鳴を上げた。しかし、危機に駆けつける仲間は黒崎の姿を見て凍りつき、恐怖に震えながらその場から逃げ去った。


視界は暗闇に閉ざされ、黒崎は夢の中にいるかのような錯覚に襲われる。明るさが戻ると、彼の身体は血塗れだった。彼は助けを求めるために周囲を見渡したが、「もう誰もいない」と絶望的に口にした。


橋本を殺してしまったことに対する後悔が彼の心を締め付ける。見たものが本物の橋本かどうかは定かではなかった。すべては理想の具現化に過ぎないのかもしれないと、独り言をつぶやいた。


しかし、血の痕跡は真実の証拠だった。黒崎は否定したくても、それが鬼の血なのか人間の血なのかはっきりとはわからなかった。だが、確信していた―それは人間の血であると。


なんてことをしてしまったんだろう。黒崎は悔恨の念に心を押し潰され、ハンドルに頭を打ち付けて泣いた。


数分後、彼は手にしていたファイルを開くと、もう一つの紙には「河童」についての文章が書かれていた。カッパは池に生息し、時折人間に姿を変えることもあるが、それは単なる姿の変化ではなく、カッパは主に人間の肉を食らい、その生命力を保つためなのだと書かれていた。


続けて紙を読むと、下矢印が描かれ、特定の座標が示されていた。


現実というよりも、自分自身が制御できないことに対する恐怖が先立ってくる。ナビに座標を入力すると、それは東京都にある小学校の池の場所だった。


黒崎は迷わず車を発進させようとすると、窓の外には血塗られた橋本が笑っている姿が映し出された。


言葉に詰まり、驚きのままで立ち尽くしていたが、車はそのまま進んでいった。


高笑いする富江の後ろから、イギリス人風の男性が現れ、肩を叩きながらナイフを突き出した。


橋本は焦りを隠せずに笑いながら問いかけた。「何をしているの?アーサーウィリアム」


アーサはナイフを橋本の首筋に近づけ、英語で「公開する前にやめろ」と言った。しかし、富江は笑い続けた。


アーサはナイフを橋本の腹に突き刺すと、腹の中から奇妙な生命体が現れた。


黒崎はすかさず肩にぶら下がっている散弾銃を取り出し、橋本を何度も撃ち殺した。何度も引き金を引いた。


アーサは黒崎の車のタイヤの跡を追おうとしたが、頭を押さえながら倒れ込んでしまった。

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