異形編
一話 鬼
外は雨が降りしきり、その音は滝壺のような迫力で響いていた。車の助手席には回転式拳銃が構えられ、白いファイルが慎重に置かれていた。白いファイルの中にはいくつかのカラープリントが丁寧に収められていた。
ゆっくりとファイルを開くと、そこには住所が鮮やかなインクで書かれていた。住所の下には、鬼に関する詳細な情報が凝縮されていた。彼らの姿や特徴、行動パターンまでが緻密に描かれている。
裏をめくると、そこにはドラゴンタトゥーの男からのメッセージが刻まれていた。文字は力強く、一筆ごとに男の覚悟がにじみ出ていた。「こいつらは危険だ!集団で行動している場合がある」という警告が、目を通じて語りかけてきた。
その場に向かうことを決意したものの、青森の遠い村に場所があることに少し躊躇があった。しかし、あいつを殺すためならどんなことでもやってやるという気持ちが次第に湧き上がってきた。
エンジンをかけ、青森へ向けて出発した。初めての運転だったが、なぜか体が熟練のドライバーのように動き、完璧な運転ができた。
青森へ向かう途中、白い巨大な手による破壊の光景が目の前に広がった。運転席からは路上に積み上げられた死体の山が見えた。その光景を目にした瞬間、ドラゴンタトゥーの男が言った言葉が脳裏によみがえった。彼によれば、ワイルドハントがアーサーウィリアムという男のせいで崩壊したというのだ。しかし、この男が何をしたのか、それがこのような結果をもたらすとは想像もできなかった。
青森の村に到着すると、廃墟と化している光景が広がっていた。倒壊した家々や生い茂った苔が、誰かが住んでいるような気配を微かに感じさせた。
助手席に握りしめた回転式拳銃を持ち、ファイルから鬼に関する情報を取り出し、車の外に出た。しかし、鬼という言葉には信頼が置けなかった。私にとって、鬼という存在は桃太郎の物語でしか聞いたことがなかったからだ。
再び資料を確認すると、鬼は暗くて陰鬱な場所を好み、人間をそこに誘い込んで襲うと書かれていた。恐怖を感じつつも、それに屈することなく歩き出した。その時、遠くの潰れた家から声が聞こえてきた。
「人間を襲い始めたのはいつからだった?」
「ワイルドハントが壊れたあとだ。彼らが消滅した後、我々は人間を狩りまくったが、最近はなぜか人間の味は美味しくないと感じるんだ。」
足音が後ろから聞こえてきたので、急いで振り返ると、複数の足跡が目に入った。しかし、何者も姿は見えなかった。
再び聞き耳を立てようとした瞬間、目の前に鬼が姿を現した。彼は頭に2本の角があり、細かく巻かれた髪と鋭い牙、そして鋭利な爪を持っていた。虎の皮の褌と腰布を身にまとい、手には突起のある金棒を握っていた。
言葉を発しようとした途端、金棒が黒崎の腹部を殴打した。痛みが走る中、回転式拳銃で鬼の腹部に何発か撃ち込んだが、意に介さずに近づいてきた。
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